教育現場におけるICTの利活用促進を目指す民間団体「デジタル教科書教材協議会」(DiTT)は2011年4月25日、成果発表会を開催した。活動初年度となる2010年度の総括として、デジタル教科書教材の普及計画を示す「DiTTビジョン」と、デジタル教科書・教材の普及促進に関する「第一次提言書」を発表した。

 今回示した「DiTTビジョン」では、「創造」「共有」「効率」といった特徴を持つ「教育の情報化」を推進することで、学生の学力低下や日本の国際競争力低下といった課題を解決できると指摘した。こうした取り組みを推進するために、官・民・利用者の3者による取り組みが重要とし、こうした取り組みの現状について「進捗が遅い」と評価した。DiTTでは2011年度の取り組みとして、「コンテンツ・ソフトWG」「教育クラウドWG」「21世紀型授業WG」「アクセシビリティWG」「広報WG」の五つのワーキンググループ(WG)を設置し、各WGによる検討内容に基づいて、提携学校などの教育現場で様々な実験やモデル授業を実践する方針である。

 「第一次提言書」では、現代に求められる人材像からあるべき教育形態を示し、その教育形態を実現するための環境について、ソフトウエア、ハードウエア、セキュリティ、人材などの多角的な側面から約100ページにわたって分析している。結論として、「政府目標のスケジュール前倒し」「教育の情報化に関する政府予算の大幅増額」「官民共同実証実験の拡大」「連絡協議会の設置」「教育クラウドの早期導入」「震災復興対策との連動」「海外展開の促進」「教育情報化臨時措置法の制定」の八つの政策を提言した。

 DiTT副会長・事務局長の中村伊知哉 慶応義塾大学教授は、2010年の活動を振り返り「参加企業間のコミュニティ作りという当初目標を達成できた」と評価した。また東日本大震災で多くの教科書や書類が失われたことを挙げて、教科書のデジタル化やクラウドサービスの重要性も指摘した。DiTTでは「デジタル教科書・教材の利用を全教科に拡大する」「超高速無線LANの校内整備率を100%にする」「すべての小中学生に1台ずつ、合計約1000万台の情報端末を配布する」――といった三つの目標を、政府目標の5年前倒しとなる2015年までに達成することを目指している。

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