大賞を受賞したVoice4uを開発したスペクトラム・ビジョンズの中島のぶ子氏(左)と、審査委員長の日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏
大賞を受賞したVoice4uを開発したスペクトラム・ビジョンズの中島のぶ子氏(左)と、審査委員長の日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏
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A3 2010-11 Winterの大賞、優秀賞の受賞者と審査員
A3 2010-11 Winterの大賞、優秀賞の受賞者と審査員
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 2011年4月25日、Androidアプリケーションの開発コンテストAndroid Application Award(A3)2010-11 Winterの表彰式が開催され、受賞作品が発表された。大賞にはスペクトラム・ビジョンズの「Voice4u」が選ばれた。優秀賞には、Quest-Comの「DroidShooting」、面白法人カヤックの「ナカマップ」、Team串かつの「串かつ」の3作品が選出された。

 A3は、モバイル市場の活性化と開発者支援を目的とした、Androidアプリケーションの開発コンテスト。2010年に第1回の「A3 2010 Spring」が開催された(関連記事:Androidアプリが見せた「生活を変える技術」の可能性---A3 2010 Spring 表彰式)。2回目の開催となる今回は、前回を100件以上上回る438作品のエントリーがあった。

 大賞に選ばれたVoice4uは、自閉症など言語表現が難しい人々の意思表示をサポートするアプリケーション。一般に「AAC(拡大・代替コミュニケーション)ツール」と呼ばれる。物や事柄、人の行為や感情などを表す様々な絵が登録されており、利用者がこれらの絵にタッチすると、その絵が表す単語を自動発声し、相手に意思を伝えることができる。従来このような用途には、絵の描かれたカードを多数収めた分厚いバインダーや高価な専用機が使われていた。だが、持ち運びが容易で、タッチパネルなどの使いやすいユーザーインタフェースを備えたスマートフォン上のアプリとして実装することで、使い勝手を格段に向上させた。新技術の追求とは違う視点でスマートフォンの長所を引き出し、ハンディキャップのある人々とその家族の生活を大きく変えた点が高く評価された。

 Voice4uは、自閉症児を持つ米国在住の日本人の母親のニーズから生まれたアプリケーションで、米国や日本をはじめ29カ国で利用されている。審査委員長の日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏は「ニッチではあるが、特定の人に切実に求められている。そういったものは(アプリを作成することで様々な機能を実現できる)スマートフォンでなければ実現できなかった。このようなニーズはグローバルに存在する」と選出の理由を語った。

 優秀賞に選ばれたのは3作品。DroidShootingは、AR(拡張現実)を応用したシューティングゲーム。ナカマップは、仲間の現在位置を地図上で確認しチャットできるアプリ。串かつは、ローカルのアプリを呼び出すように、他のAndroidスマートフォンへのFeliCaによるPush送信を行うことができるミドルウエアアプリである。

 人々の価値観や生活を変えるポテンシャルを感じられるアプリに贈るフロンティアスピリッツ賞には、エーアイサービスのAiWiFiが選ばれた。新しいユーザー体験が盛り込まれたアプリに贈られるイノベーション賞には、ねこめしのカレイドカメラ3D、グローバル市場での展開が期待されるアプリに贈られるグローバル賞にはGClueのDroidget Camera。映像を活用しより便利で魅力ある携帯ライフを提案するアプリに贈られるイメージング賞にはモルフォのMorpho Self Cameraが、それぞれ選ばれた。

 学生の作品を対象にした学生賞にはドーナツのmeets、驚きを感じる企画やアイデアを盛り込んだアプリに贈られる企画賞にはコードヘッドのscrapRoidが選出された。新しい技術にいちはやく果敢に挑んだ作品に贈られるアーリーアダプター賞は井上恭輔氏と片山育美氏のtagletが、ユーザーインタフェースやデザインに優れた作品に贈られるルック&フィール賞はkotaroid & georgeatomのRetroMoviePlayerが受賞した。

 審査員は丸山氏のほか、アプリックス 取締役 郡山龍氏、ITジャーナリスト 林信行氏、 KDDI パーソナルプロダクト企画部 Android企画グループ 主任 平野裕介氏、NTTドコモ スマートコミュニケーションサービス部 コンテンツ推進室 コンテンツ支援担当部長 山下哲也氏、シャープ 通信システム事業本部 グローバル商品開発センター Gプロジェクトチーム チーフ 白石奈緒樹氏、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 営業本部 マーケティング部 統括部長 金子克之氏、ソニー 業務執行役員SVP プロフェッショナル・デバイス&ソリューショングループ 半導体事業本部 イメージセンサ事業部 事業部長 上田康弘氏、日経BP社 林哲史 電子・機械局長が務めた。また特別審査員として、ネットイヤーグループ 代表取締役社長 石黒不二代氏、トリンドル玲奈さんがそれぞれ企画賞とルック&フィール賞を担当した。

表●Android Application Award 2010-11 Winterの受賞作品
 作品名作者概要
大賞Voice4uスペクトラム・ビジョンズ自閉症など言語表現が難しい人々の気持ちや、考えていること、行動、必要とするものを表現できるように支援するアプリ。AAC(拡大・代替コミュニケーション)ツール。アプリに登録された物や人物、事柄をタッチするだけでアプリが発声し、意思を伝えてくれる。
優秀賞DroidShootingQuest-ComAR(拡張現実)を応用したシューティングゲーム。上下左右、全方位から迫るドロイド君を標的としてシューティング。獲得したハイスコアはサーバーにアップロードされ、全世界のプレイヤーと腕を競うこともできる。
ナカマップ面白法人カヤックグループを作り、位置を共有してコミュニケーションを取ることができるアプリ。友人や会社の同僚、家族などといったグループを作れば、地図上で瞬時にグループメンバーの居場所を確認できる。また、複数のメンバー同士でリアルタイムにチャットを楽しむことが可能。
串かつTeam串かつインテントをFeliCa Push送信に変換するミドルウエアアプリ。「リモートインテント」「ブラウザ起動 」「メーラー起動」の3種類のFeliCa Pushメッセージに対応する。NFCの機能を使い、auの「IS03」などのFeliCa対応端末に対してFeliCa Push送信も行える。
コミュニケーション賞Camelog ~カメラでつながるコミュニケーション~エイチーム写真を思い出の場所に残せるアプリ。「場所×(写真+言葉)」を使用し、その場所で誰かが残した「記憶」や「思い出」を共有・共感できる新しいコミュニケーションツールとして利用できる。
フロンティアスピリッツ賞AiWiFiエーアイサービスAndroid端末内のあらかじめ設定した送信元フォルダ内のファイルを、FTPサーバーやDropboxなどの各種オンラインストレージサービスに自動的にアップロードするアプリ。カメラアプリで撮った写真などを、いちいちUSBケーブルで接続してPCに転送する手間を省ける。
イノベーション賞カレイドカメラ3Dねこめし内蔵カメラを使った万華鏡アプリの3D対応版。NTTドコモの「LYNX 3D SH-03C」やソフトバンクモバイルの「GALAPAGOS 003SH」で動作する。3D表示すると、万華鏡が奥に伸びているように見える。画面をキャプチャして保存することも可能。
グローバル賞Droidget CameraGClue画面に貼り付けた吹き出しや地図などのウィジェットと一緒に写真を撮影できるアプリ。また、クアルコムのAndroid向けAR SDK「QCAR」を使ってウィジェットを呼び出すことが可能。呼び出したウィジェットをタップするとブラウザーが起動し、Webサイトに飛ぶこともできる。
イメージング賞Morpho Self Cameraモルフォ音声ガイダンスで誘導してくれる自分撮りカメラ。液晶画面で写り具合を確認しなくても、自分が画面中央となるよう「少し上に向けて」や「少し右」というように誘導してくれる。カップル撮影の際には、「もっと寄って」と2人の距離が近づくよう促してくれる。
学生賞meetsドーナツ「日常の出会いを記録する」ソーシャルネットワーキングアプリ。FeliCaやNFC(近距離無線通信)に対応した端末同士をタッチしたり、その場で発行する「ミーツコード」を交換することで出会った人たちとのコネクションを記録。Twitter IDと連携し、出会いをそのままツイートすることも可能。
企画賞scrapRoidコードヘッド写真、テキストをスクラップブックのようにメモできるアプリ。Android端末の他のアプリから「共有」機能を使って、簡単に写真、画像、テキスト、ツイート、URL、マップ情報などをスクラップできる。シートの背景画像も変更可能。
アーリーアダプター賞taglet井上恭輔&片山育美NFC(近距離無線通信)を使った新感覚の情報共有ツール。SuicaやPASMOなどのICカード(NFCタグ)に、任意のURLやメールアドレス、Twitter IDなどの付加情報を関連付けることができる。関連付けた情報はtagletをインストールしたAndroid端末で共有され、端末をNFCタグにタッチするだけで簡単にアクセスできる。
ルック&フィール賞RetroMoviePlayerkotaroid & georgeatom動画を撮影する際にカメラにエフェクト(モノクロ、セピア、ポスタライズ)をかけることで、8mmビデオ風のレトロ調な動画を撮影できるアプリ。撮影した動画を再生する際には、映画館のスクリーンで古い映画を上映するときのようなカウントダウンから始まる。
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