写真1●デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員パートナーの八子 知礼氏(写真:井上裕康)
写真1●デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員パートナーの八子 知礼氏(写真:井上裕康)
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写真2●スマートフォン導入の失敗例と成功例(写真:井上裕康)
写真2●スマートフォン導入の失敗例と成功例(写真:井上裕康)
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 デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員パートナーの八子 知礼氏は2011年4月22日、「スマートフォン向けセキュリティソリューション」セミナーの基調講演で、企業のITネットワークにおいて「東日本大震災後、モバイルクラウドが必須になった」と語った(写真1)。

 八子氏は、2008年9月のリーマンショック以降、サーバーの統廃合やハードウエアの仮想化、そして基幹業務以外でSaaSを使うといったクラウドの利用によって、企業ネットワークではコスト削減に努めたと説明。2010年になり、クラウドは新規事業の早期立ち上げや別事業とのコラボレーションの実現といった目的にも利用されているとした。

 またここ最近、モバイルでクラウドを利用する(モバイルクラウド)環境が急速に整備されている。具体的には、スマートフォンやタブレット端末といった高速処理可能な携帯端末が急速に増えたこと、LTEといった高速なワイヤレスネットワーク環境が提供されるようになったことなどを挙げた。

 こういった環境の中、2011年3月の東日本大震災が発生したことで、モバイルクラウドのニーズが急速に高まったと指摘。その理由は五つある。(1)有線の固定インフラがなくても利用できること、(2)手元にサーバーを置かなくて済むこと、(3)会社の建物がなくなっても事業を継続できること、(4)バッテリーを搭載した携帯端末は計画停電に対応しやすいこと、(5)情報システム部門に頼らずにシステムを利用できること――を挙げた。

スマートフォンに対応するポリシーの策定を

 八子氏は、モバイルクラウドを導入するときの課題の一つとして、スマートフォンに対応するポリシーの策定を挙げた。

 スマートフォンの導入で失敗している企業の例として、「メールとグループウエアにアクセスする専用端末として利用」「企業ネットワークにはWindowsデスクトップのリモートアクセスで接続」「スマートフォンとフィーチャーフォンを区別しないポリシーでの運用」などを挙げた(写真2)。特に専用のポリシーを作成していない企業では「ノートパソコンは持ち出し禁止だが、スマートフォンは持ち出し可能」、一方で「フィーチャーフォンは持ち込み不可だが、iPhoneは大丈夫」といった現場レベルの運用が起こる危険性を指摘し、専用ポリシーの必要性を説いた。

 また八子氏は、今後企業ネットワークに接続する端末が多様化することも考慮し、基本方針を決めておくことを勧めた。その際、ユーザーの利用方法を何でも禁じるわけではなく、どの条件を満たせば利用してもいいのか、何は制限されるのかといったことを決めておくことが重要と説明した。