IPDCフォーラムは、「ホワイトスペースにおけるIPDC技術仕様指針書」をまとめた。V-High帯利用の全国向けマルチメディア放送用にISDB-TマルチメディアフォーラムがまとめたISDB-Tmmの運用仕様書をベースに、IPDCフォーラムの技術検討部会がホワイトスペースを念頭に差分を抽出して仕様指針書をまとめた。検討のリーダー社はNEC、サブリーダーは京セラコミュニケーションシステムである。

 ISDB-Tmmの運用規定でIPDCは、主に蓄積型放送での活用が想定されているが、IPDCフォーラムがまとめた指針書ではインターネットにおけるストリーミング配信のようなある程度のリアルタイム性を持ったデータ配信も想定し、コンテンツの種類として「IPDCダウンロード」と「IPDCストリーミング」を定義した。その上で、受信端末の種類、ロケーション、コンテンツの三つの要素の組み合わせでサービスシーンを類型化した。代表的なものは、デジタルサイネージ型(手元端末ではなく設備端末に各種コンテンツや広告を配信)、ツインフロー型(現地そのものがリアルコンテンツであり、それと密結合したバーチャルコンテンツを配信)、テザリング型(番組情報や雑誌などを家庭用モデムに配信、タブレット端末に転送して利用)、エリアスルー型(地下鉄の駅などで受信し、移動後に利用)である。

 指針書では、サービス実現の鍵として五つのポイントを指摘した。第1がスロット(場所、時間、周波数)単位の管理である。スロット管理フローの考え方などを述べている。第2がエリアをまたいだ場合のIPによるコンテンツ仮想化である。第3がエリア間ローミングである。一つ一つはエリアが狭い中で、またがってサービスを展開することも可能にすることなどを想定する。第4がサービス保護である。ここでは、装置への制御信号の送信なども想定し、小さなデータの固まりなど様々なレベルでのセキュリティの必要性を指摘する。第5がサービス通知である。ホワイトスペースでサービスが行われていることをどう端末に告知するか、という点である。仕様指針書では、ビーコンのようなものを使えるケースと使えないケースを想定し、告知の考え方や告知内容の提案などを行っている。

<11年度は新インフラ展開やダブルスクリーン対応なども検討へ>
 IPDCフォーラムは2011年度の展開に向けて、大きく三つの活動テーマを設定した。一つは、ホワイトスペースとV-Low帯におけるIPDC利活用を推進することである。実証実験などとも連携した具体的な技術提案などを検討していく。

 例えばホワイトスペースに関連しては、特区に指定されたプロジェクトの提案者に、IPDCフォーラムのメンバーが入っている。京セラコミュニケーションシステムはFM京都と共同で「地域密着性・情報速報性に長けた地域新メディアの創出」を提案している。従来のエリアワンセグに蓄積メディア配信(IPDC)を付加し、ホワイトスペースにおける地域新メディアを探る提案を行っている。「地域コミュニティ向けマルチコンテンツ放送」を提案した毎日放送は、蓄積型のクロスメディアコンテンツ放送(IPDC)を導入すれば、ユーザーを「時間的制約」から解放でき、ユーザーの選択肢を増やし、ホワイトスペースのメディアとしての可能性を拡げると期待している。こうしたプロジェクトと連携した活動が展開されそうだ。

 第2には、新しいインフラへの展開である。ケーブルテレビや高速無線LANなどへの展開も想定し、調査検討を進めていく。第3は、IPDCの新しいサービスの発掘である。キーワードとして、ダブルスクリーン、スマートTVなどを挙げる。例えば、ダブルスクリーンとして、放送波でテレビ放送コンテンツと一緒に関連情報とその制御情報(再生タイミングなど)をIPDC配信し、無線LANなどを通じてタブレットにこうした情報を送信するという形態である。

 なお、2011年度よりフォーラムの会員制度の見直し、正会員の会費を年18万から12万円に下げた。また会費が年5万円で勉強会に参加などできる準会員制度の運用を開始した。