日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)は2011年4月15日、アジア太平洋地域のIPv4アドレスを管理している組織APNIC(Asia Pacific Network Information Centre)が持つIPv4アドレスの自由在庫(制約なしにユーザーに割り振れるアドレスの在庫)が尽きたことをアナウンスし、同時にJPNICにおいても国内でのIPv4アドレスの通常割り振りを終了することを宣言した。
JPNICが同時にIPv4アドレスの通常割り振りを終了するのは、JPNICでは独自のアドレス在庫を持たず、APNICと在庫を共有しているためである。今後は、これまでのように国内ユーザーが自由にIPv4アドレスをもらうことはできなくなる。
JPNICによれば、今後のIPv4アドレス分配方法は、既に決定済みの「最後の/8ブロックからの分配ポリシー」に基づくものへと変更されるという。/8ブロックは、約1670万個のIPv4アドレスに相当する。
分配ポリシーは、(1)「新規の事業者」および「IPv6への移行のために利用する目的」のために分配する、(2)初回割り振りまたは追加割り振り基準を満たしていれば、1組織につき1回まで「/22」ブロック(1024個のIPv4アドレス)の割り振りを認める---の2本柱となる。
なお、APNICフォーラムでは現在、上記の「最後の/8ブロックからの分配ポリシー」について、より効率的に実施するために、「最小分配サイズを/24ブロック(256個のIPv4アドレス)へ変更し、同一組織が複数回の分配を受けられるようにする」「1組織が分配を受けることの可能なアドレスサイズの合計は/22のまま変更しない」といったポリシーの微修正を検討しているという。
修正されたポリシーを実際に採用するかどうかは、APNICが4月末から5月上旬にかけて発表する予定となっており、採用されればJPNICにおける分配方法も数カ月以内に同様に変更されるとしている。
分配済みIPv4アドレスの移転が可能に
JPNICでは今回、分配済みIPv4アドレスの新たな再利用方法として、余っているアドレスをユーザー間で移転できるようにする制度を施行する予定であることも明らかにしている。4月28日まで移転制度に関する意見募集を実施しており、2011年7~8月をめどに施行できるよう検討を進めていくという。
移転制度の骨子は以下の通り。まず、移転可能なIPv4アドレスの種類については、JPNICが管理するIPv4アドレスのうち、「IPアドレス管理指定事業者へ割り振られているPAアドレス(プロバイダ集成可能アドレス)」「特殊用途用PIアドレス(プロバイダ非依存アドレス)」「歴史的経緯を持つPIアドレス」の3種類とする。
移転元となれる組織については、JPNICと契約を締結している「指定事業者」「特殊用途用PIアドレス割り当て先組織」「歴史的PIアドレス割り当て先組織」とし、移転先となる組織は「JPNICと契約締結している組織」または「新たにJPNICと契約予定の組織」とする。移転できるアドレスの最小単位は「/24」ブロック(256個のIPv4アドレス)となっている。
国内で自由に割り振りを受けられるIPv4アドレスがついに枯渇したことで、今後、企業ユーザーが新たに大量のIPv4アドレスを取得してデータセンターやインターネットサービスを立ち上げるのは難しくなった。上記アドレス移転制度が実施されても、果たしてどれくらいユーザーが必要とするアドレスを融通し合えるようになるのかの見通しは不透明だ。
もはや「IPv6移行への秒読み段階」などと呼べる時期は過ぎ去り、IPv6への移行を本格的に進め始めなければならない時期に突入したと言えるだろう。