日本OSS推進フォーラムは2011年4月11日、Rubyの採用事例集を公開した。富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ、日立ソリューションズ、日本ユニシス、シーイーシーが構築した事例を掲載しており、「Rubyの採用が大手システムインテグレータ(SI)でも広がっている」(日本OSS推進フォーラム)としている。
事例集を作成したのは日本OSS推進フォーラムのアプリケーション部会 RubyアプリケーションTF(タスクフォース)。日本OSS推進フォーラムは大手コンピュータメーカーや大手システムインテグレータなどによる団体で、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が事務局を務める。RubyアプリケーションTFには前述の4社のほか、富士通、NEC、テクノプロジェクトなど合わせて19社が参加している。
事例集に掲載されているのは、水族館の来館者が専用端末やニンテンドーDSで情報を閲覧できるシステムや、社内SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、携帯電話向けのショッピングモール案内システム、コミュニティサイト、解析業務運用システム、モバイル機器管理システムなど。「掲載された事例は一部であり、このほかにも、TFメンバー企業では多くのシステムがRubyで開発されている」(日本OSS推進フォーラム)という。
Rubyを採用した理由としては、短期間で開発する必要があったことや、アジャイル開発に適していたことなどが挙げられている。Ruby適用の効果としては2カ月など短期間でカットオーバーできたこと、ユーザーの要望に柔軟に対応できたことなどが報告されている。また課題としては、Ruby on Railsの設計思想にそぐわないコードを作り込んでしまったためメンテナンス性に問題が生じたことや、Railsの規約やライブラリの調査に工数がかかったことなどがあったという。
RubyアプリケーションTFでは、Rubyベースのプロジェクト管理ツールをオープンソースソフトウエアとして公開(関連記事)するなどの活動を行っている。TFのメンバーが実施した実証実験では「RubyやRuby on Railsの持つ機能にマッチした仕様に基づく開発であればJavaの10倍近くの生産性が見込める場合もあり、PHPと比較しても数倍の生産性が見込める」といった結果が得られているという(Ruby on Rails 検証報告書)。
日立ソリューションズや日本ユニシスではRubyセンターが設置されるなど、TFのメンバー企業の中にはRubyの専門部署を置く動きもある。TFでは今後もRubyのITビジネスへの適用を促進する活動を行っていく方針で、興味のある企業の参加を歓迎するとしている。
システム | 導入企業 | 開発企業 | 稼動時期・実績など |
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水族館の専用端末やニンテンドーDS向け情報配信・管理システム | 島根県立しまね海洋館アクアス | 日立ソリューションズ | 2010年4月~ |
社内SNS「Knowlexis」 | 日立ソリューションズ | 日立ソリューションズ | 2008年7月~、登録ユーザー約5000人 |
伝統工芸紹介サイト「Japancraft.jp」 | エー・ティ・エー/シーイーシー | シーイーシー | 2010年12月~ |
携帯電話向け商業施設案内パッケージソフト | 大手百貨店など | シーイーシー | 2010年2月~、のべ数万人が利用 |
解析業務運用システム | ライオン | 日本ユニシス | 2009年1月~ |
モバイル機器管理システム | 富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ | 富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ | 2010年8月~、1000人規模で利用 |
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