写真1●日本通信の三田聖二代表取締役社長
写真1●日本通信の三田聖二代表取締役社長
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 日本通信は2011年4月8日、先日発表した有効期間4カ月で1Gバイトまでのデータ通信に利用できるSIM単体製品「b-mobile Fair」(関連記事)についての記者説明会を開催した。日本通信の三田聖二代表取締役社長(写真1)は、「モバイルトラフィックの増大は世界的な問題。数%のユーザーが大半のトラフィックを消費しているのが現状だ。ユーザー間でデータ通信をフェアに使えるような環境にしていきたい」と説明。1Gバイト単位で使った分だけの応分負担とするb-mobile Fairの狙いを語った。

「“応分負担”が今後の料金プランの在るべき姿」

写真2●日本通信の福田尚久代表取締役専務 CFO
写真2●日本通信の福田尚久代表取締役専務 CFO
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 続いて登壇した同社の福田尚久代表取締役専務 CFO(写真2)は、昨年4月に発売したb-mobile SIM以降、日本通信がSIM単体の市場を作ってきたことを説明。b-mobileSIM U300が上限300kビット/秒と速度を抑えていたことから、「ユーザーからは通信速度の速いSIMを出してほしいというニーズが多かった」(福田CFO)と語る。

 ニーズに応えた新たなSIM単体製品を提供する上で、同社はまず各携帯電話事業者の料金を分析したという。各携帯電話事業者の料金プランは、主に定額料金と二段階定額があるが、およそ月当たり14Mバイトを超えると二段階定額より定額料金のほうが得になるため、スマートフォンを扱うユーザーは定額料金を選ぶ場合が多いのではとする。ただこのような流れは、たくさんパケットを消費するヘビーユーザーと、一般のユーザーの間で不公平な費用負担を助長する可能性があると指摘する。

 実際、1%の超ヘビーユーザーがトラフィック全体の30%を占めているというNTTドコモや、同じく3%の超ヘビーユーザーがトラフィック全体の50%を占めているソフトバンクモバイルの例などを示し、「1人の超ヘビーユーザーを一般ユーザー42人が支えている計算」(福田CFO)と解説。「このような状況は長く続かない。これからの料金プランはフェアな“応分負担”が在るべき姿」とし、このような問題を解決するために取り組んだ製品がb-mobile Fairとした。

写真3●NTTドコモのパケホーダイ・ダブル2との比較 b-mobile Fairは1カ月当たりで当分換算すると250Mバイト当たり2087円。1カ月当たり745Mバイトを超えなければ、b-mobile Fairのほうが得になる
写真3●NTTドコモのパケホーダイ・ダブル2との比較 b-mobile Fairは1カ月当たりで当分換算すると250Mバイト当たり2087円。1カ月当たり745Mバイトを超えなければ、b-mobile Fairのほうが得になる
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 b-mobile Fairは、NTTドコモのネットワークを利用したMVNO(仮想移動体事業者)サービスであり、通信速度は下り最大7.2Mビット/秒、上り最大5.4Mビット/秒、有効期間4カ月で1Gバイトまでのデータ通信の料金を9800円とする。1Gバイトを超えた場合は、オンラインチャージで転送料が8350円を加えることで、最大転送量をさらに1Gバイト増やせる。福田CFOは、NTTドコモのスマートフォン向けの二段階定額プラン「パケ・ホーダイダブル2」(月額上限5985円+SPモード月額料金315円で合計月額上限6300円)と比較し、1カ月当たり754Mバイトを超えなければ、b-mobile Fairのほうが得になるという計算を披露した(写真3)。同社は一般的なスマートフォンユーザーの1カ月のパケット量を約250Mバイト程度と見積もっている。

 なお同社のユーザーのこれまでのパケット消費動向だが、携帯電話事業者と比べるとユーザー間の差は少なく、「従来から応分負担的なサービスを作ってきたと言える」(福田CFO)とする。ただb-mobileSIM U300のユーザーでも月当たり1Gバイトを超えるようなユーザーが存在したり、iPhone向けに出しているプラチナサービスでも約5%のユーザーが754Mバイトを超えるパケットを消費している状況があるのも事実という。同社によると「速度を向上した定額使い放題のサービスを作れないことはないが、携帯電話事業者からネットワークを月々借りてサービスを提供している以上、公平性を維持していかないといずれ成り立たなくなる。またあるべき姿でもない」(福田CFO)と語り、応分負担の料金プランの意義を強調した。

SIMロック解除は「メーカーや販売店の変化のインパクトが大きい」

 福田CFOは、ガイドライン上は4月1日から実施となったSIMロック解除についても言及した。

 SIMロック解除については、携帯電話事業者間でSIMを入れ替えて利用できるような側面が強調されているが、「これには違和感がある」(福田CFO)と指摘する。福田CFOによると、SIMロック解除の本質は「携帯端末と通信料金が一体化され実質競争が無かった市場に、競争がもたらされること。SIMロック解除によって、市場はモバイルデバイス市場とSIM市場に分かれ、それぞれに新規プレーヤーが登場する」と強調する。特にNTTドコモがSIM単体の提供に本腰を入れ始めたことにインパクトがあるとし、「これを受けてメーカーや販売店がどう対応するかが大きい。向こう半年のうちに日本のメーカーも携帯電話事業者に端末を納めるのではなく、メーカー独自に販売を始めるのではないか。それがSIMロック解除のもたらす本質的な変化」(福田CFO)と語った。

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