半導体製造メーカーの米フリースケール・セミコンダクタは米国時間2011年4月5日、東日本大震災で被災した同社の仙台ウエハ工場(以下、仙台工場)を再開しないと決断したことを発表した。被害状況を調査した結果、深刻な損傷を受けていたため。同社は2009年4月、仙台工場を2011年に閉鎖する計画を発表していた。12月の閉鎖に向けて準備を進めていたが、今回の震災によって閉鎖が8カ月ほど早まったことになる。

 フリースケール・セミコンダクタによれば、仙台工場の設備装置やインフラは広範囲に及ぶ損傷を受けているという。さらに、現在も継続して発生している余震や、引き続き懸念される安全上の問題、仙台地区の様々な基盤設備の被害などを調査した結果、「妥当な期間内に仙台工場でのウエハ製造を稼動レベルに復旧することは難しい」(同社)と判断し、仙台工場を再開しないことを決定したとしている。

 仙台工場では、マイクロコントローラやアナログIC、センサー製品を製造していた。閉鎖に伴う顧客への対応として同社では、(1)積み上げ在庫の使用、(2)代替製品の提案、(3)別工場での生産増強、(4)技術移管の加速---などの措置をとるとしている。(1)の積み上げ在庫については、完成した製品を仙台以外の工場で保管していたため、震災の被害を受けなかったという。

 なお、震災発生当時、同工場はすぐに操業を停止し、工場内の社員は全員無事に避難したという。その後の社内調査により、同工場に勤務するすべての社員および契約社員の無事を確認できている。同社はまた、仙台工場の社員に対して期間を延長して給与の支払いを継続するとともに、総合的な退職パッケージを提供すると表明している。