写真●被災復旧状況について説明するNTT持ち株会社の三浦惺社長(左)、NTT東日本の江部努社長(中)、NTTドコモの山田隆持社長(右)
写真●被災復旧状況について説明するNTT持ち株会社の三浦惺社長(左)、NTT東日本の江部努社長(中)、NTTドコモの山田隆持社長(右)
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 NTT(持ち株)、NTT東日本、NTTドコモの3社は3月30日、東日本大震災による被害と復旧の状況、今後の見通しについて会見した(写真)。

 今回の震災と津波でNTTグループの通信設備には(1)通信設備を設置している局舎ビルの水没、流失、損壊、(2)局舎ビル間をつなぐ通信ケーブルの切断、管路の破損、(3)屋外の電柱倒壊、架空ケーブルの切断、(4)携帯電話基地局の倒壊、流失――という被害が生じた。

 さらに震災後、商用電源が長期間復旧しなかったことから、交換機などの通信設備、携帯電話基地局などで、蓄電池などの非常用電源枯渇による被害が拡大。サービスが提供できない通信設備は、固定系が3月13日に最大約150万回線(加入電話、ISDN、フレッツ光の合計)、移動通信の無線局(免許別)数が、3月12日に最大6720局に上った。その後、約1万人以上を投じた復旧活動の結果、3月28日時点では固定系の影響回線数が約11万2000回線で93%が復旧済み、無線局は停波中の局が約690局で90%が回復している。

 今後の固定系通信サービスの復旧見通しについては、3月30日時点でサービスが中断している54通信ビルのうち、福島県の原子力発電所周辺の9ビルを除く45ビルを4月末までに復旧させることを目指す。

 具体的には、現時点で電力の損傷など被災規模の小さい15ビルを4月第2週までに復旧させる。次に、ビルに引き込む伝送路回線まで損壊しているケースにあたる4ビルは、う回ルートの構築などにより4月中旬までに復旧する見通し。残りの26ビルでは、伝送路の損傷に加えて局舎や通信設備などが全壊していることなどから復旧時期は4月末を目指すが、遅れる場合もあるとしている。

 県別で見ると、4月末まで復旧しない見込みの地域が多いのは宮城県で21ビル。岩手県はサービスを停止している21ビル中16ビルが今後一週間前後で復旧する見通しである。福島県では、サービス停止している11ビルのうち9ビルが福島原発の避難エリアにあり、再開の目処が立っていない。それ以外のいわき市久ノ浜、相馬市磯部の2ビルは4月中旬に復旧する予定である。

 復旧したビルでは加入電話、ISDN、フレッツ光サービスの3サービスが基本的に提供可能になる。ただし、通信ビルから加入者までを結ぶアクセス回線部分が損傷している地域もあり、実際には、すべてのユーザーに対してサービスを再開できるわけではない。東北沿岸部では約6.5万本の電柱が流出、折損し、電柱を伝っている電話線も6300km程度が流失、損傷している。まだ被害を把握していないところも多く、「相当手を入れなくては復旧しない地域もある見通し」(NTT東日本の江部努社長)だという。

 NTTグループとしては自社の通信サービスの復旧に取り組むほか、被災地における特設公衆電話(約2300台)や衛星携帯電話(約870台)などの無償提供、避難所への無料インターネットコーナー設置(約138カ所)などを実施している。さらに今後の生活支援策として、約3000戸の社宅と社有の体育館4件を政府からの要請に基づいて被災者に提供する用意をしている。またグループとして義援金10億円を中央共同募金会、日本赤十字社などに寄付した。