写真●NTTデータの角野みさきLindacloud開発担当部長(撮影:中根 祥文)
写真●NTTデータの角野みさきLindacloud開発担当部長(撮影:中根 祥文)
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 「社員一人ひとりのナレッジを集約・共有したり、オフィスにおける定型業務を効率化したりするために活用すること。これがクラウドコンピューティング導入の勘所だ」。NTTデータ法人システム事業本部 テレコムBU Lindacloud開発部 Lindacloud開発担当 部長の角野みさき氏は、Cloud Days Tokyo 2011の「クラウドを、もっと身近に、安価に。『所有型クラウド』の考え方と活用例」と題した講演で、こう語った。

 冒頭で「『日本企業は米国に比べて、ビジネスに対するITの寄与率が低い』と指摘する統計レポートをよく見かける。だが、そもそも日米間で統計の取り方に差異があるようだ。詳しく分析していけば、日米で大きな差異はないことが分かる」と主張した。そのうえで日本におけるITの課題として、非IT産業のイノベーションや企業内のナレッジ(知識)の形成につながっていないことを挙げた。

 次いで、企業がITの投資効果を高めるうえでクラウドコンピューティングの活用は有効だが、効果の高い領域を慎重に選んで導入するべきであると指摘した。

 企業がクラウドを導入する主な目的は以下の4つに分類できるという。(1)ERP(統合業務パッケージ)が担う基幹業務への適用、(2)企業競争力の源となっている専門業務への適用、(3)社員一人ひとりが持つ知識(ナレッジ)の社内共有の促進、(4)オフィスの定型業務の効率化、だ。

 ただし(1)と(2)については懐疑的だ。(1)に関しては既に安価かつ高機能なERPパッケージが多数存在すること、(2)では企業独自の業務ノウハウに合わせてクラウド側をカスタマイズする必要がある、などの理由から、クラウドに置き換えてもコスト面で魅力が乏しいと言う。

 一方、クラウドを適用することで高い投資効果が見込めるのは(3)と(4)だ。(3)については「社内の膨大なナレッジを集約するためには、安価で大容量のIT資源が不可欠。加えて、それらを簡単かつ高速に取り出せるよう、高性能な検索エンジンも必要になる。こうした課題がクラウドの活用でクリアされる」と、角野氏は話す。(4)については企業ごとのカスタマイズがそれほど必要ではなく、セキュリティを確保すればクラウドの企業利用が進む、という。
 
 企業がクラウドコンピューティング導入を検討するうえでのポイントは他にもある。「現状のクラウドコンピューティングは、データセンターの利用やネットワーク環境の整備でコストがかさむうえ、機能面の制約も多く企業ニーズに応えきれない。こうした観点からNTTデータは、“プライベートクラウド(企業内クラウド)”のソリューションを強化している」という。プライベートクラウドとは、企業内に構築したクラウドコンピューティングの仕組みのこと。同社は現在、オープンソースの分散処理フレームワーク「Apache Hadoop」(以下、Hadoop)に対応したプライベートクラウド構築用のアプライアンス「Lindacloud」を展開している。

 角野氏はサーバーLindacloudについて、「“コモディティ化”したハードウエアを利用し低価格化を図った。ハードウエアの信頼性対策を追求する代わりに、OSSと自社ソフトを組み合わせ、ソフトウエアで安全性・可用性を確保している」と説明した。現在、NTTデータはLindacloudに様々なソフトウエアを搭載して販売している。講演では、Hadoopを搭載した「Lindacloud for Hadoop」、NASサーバーを搭載した「Lindacloud for NAS」、Windows Serverを搭載しシンクライアントからの接続に対応した「Lindacloud for ThinClient」、同期型オンラインストレージサービスを提供する「Lindacloud for Lindasync」を紹介した。