「パブリッククラウドはコスト削減が注目されるが、それのみではIT部門への圧力が高まるだけ。ビジネスのやり方など“何かを変えたい”人の支援に使っていくべきだ」---。日本マイクロソフトの関田文雄プラットフォーム戦略アドバイザーは言う。日経BP社主催のクラウドコンピューティング専門展「日経BP Cloud Days Tokyo 2011 Conference & EXPO」において、同氏は企業でのパブリッククラウド活用の指針やプラットフォーム選択のポイントを講演した。
パブリッククラウドの一般的な利点は「ビジネスとITの距離が縮まること」(関田氏)。コスト削減、ビジネスの俊敏性の向上といった特徴は、経営層にとって理解しやすくIT部門と経営層・ユーザー部門がより近い関係になれると予想する。しかし、これは良いことだけではない。「経営層からのコスト削減への圧力が高まったり、ユーザー部門からシステム導入にかかる期間を短縮する要求が強くなったりもする」。
こうした点を踏まえて関田氏は「パブリッククラウドの活用は、ビジネスを変えたい人たちを支援する観点で推進すべき」と主張した。また、パブリッククラウドの活用は当面は基幹系ではあまり進まず、フロント系や消費者向けサービスで広がっているという。「当社が提供したパブリッククラウドでは、6~7割が消費者向けのシステムだ」と明かした。
パブリッククラウドの活用に当たっては、プラットフォームの選択が重要になる。そこで考えるべき課題として、コスト、可用性、認証、既存システムとの連携、既存アプリケーションの再利用、運用監視といった点を挙げた。これらの課題に対し、同社が提供する「Windows Azure Platform」は解決策を用意しているとアピールした。
まずコストについては、「規模の経済でプライベートクラウドよりも圧倒的に安い。ワールドワイドで6カ所のデータセンターがあり、例えばシカゴでは数十万台のサーバーを稼動させている」(関田氏)とした。可用性についても「データを分散して保存するうえ、二つ以上の複製を作る」ため、高い可用性を実現できているという。
認証や既存システムとの連携では、Windows Azure Platform上に用意する様々なサービスが役立つ。認証では社内のActive DirectoryとAzureを連携させる「Windows Azure AppFaric アクセス コントロール サービス」を用意する。システム連携については、社内のデータベースとAzureのデータベースを同期させる「SQL Azure Data Sync」や、Webサービスでアプリケーションを連携させる「Windows Azure AppFaric サービス バズ」を提供する。
ネットワークのセキュリティは「Windows Azure Connect」で確保する。このサービスを利用すると、企業内ネットワークとAzureをIPsec VPNで接続できる。現在はベータ版を提供中で、2011年上期に本サービスを開始する予定だ。
運用監視については、マイクロソフト自身では「パブリッククラウドとしての運用監視のみを提供する」(関田氏)。ただし、サードパーティの事業者から既存の運用監視システムと変わらない使い勝手のサービスを提供予定だ。一例として日立情報システムズの「App Bridge Monitor」を挙げた。Azure上に構築された運用監視システムで、サーバーを1時間当たり1.25円で監視するという。2011年4月に提供開始予定だ。
なお2011年3月2日午前、東京ミッドタウンでクラウドコンピューティングの専門展「日経BP Cloud Days Tokyo 2011 Conference & EXPO(略称:Cloud Days Tokyo 2011)」が開幕した(関連記事)。3日まで専門セミナーと展示会が開かれる。