写真 握手を交わすNTTの宇治代表取締役副社長(左)とNHKの永井専務理事・技師長
写真 握手を交わすNTTの宇治代表取締役副社長(左)とNHKの永井専務理事・技師長
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 日本放送協会(NHK)とNTT(持ち株会社)は2011年2月22日、共用タイプのグローバルIPネットワークを利用したスーパーハイビジョン映像の国際間(東京・ロンドン間)ライブ中継を2月18日に世界で初めて成功したと発表した。

 NHK放送技術研究所からスーパーハイビジョン映像を米国経由で英BBCに送信し、そこから折り返してNTT武蔵野研究開発センタで受信して再生した。今回の実験では、NTTの研究開発用テストベッドネットワーク「GEMnet2」と米国の「Internet2」、欧州「GEANT」、英国「JANET」を用いて、日本と英国をつなぐグローバルIPネットワークを構築した。

 NHKが開発した符号化装置により、ベースバンドが24Gb/sの符号量となる映像信号をMPEG-4 AVC/H.264符号化方式でおよそ220Mb/sに、27.6Mb/sの音響信号をMPEG-2 AAC-LC符号化方式でおよそ1.9Mb/sに、それぞれ圧縮したものを組み合わせた。その後、IPインタフェース装置により2つのIPストリームとして出力、NTTが開発したIP伝送技術を使ってグローバルIP実験網を介して伝送し、NHKが開発した復号化装置と専用プロジェクタを用いて再生した。

 今回、270Mb/sを超す高速IPストリームを実現する共用型のグローバルIPネットワークの両端にNTTの研究所が開発したセキュアIP伝送終端装置を導入した。これにより、AES(128ビット)暗号・復号とIPパケットロスの復元(LDGM-FEC)、二つのIPストリーム同士の到達時間の偏差の抑制という三つのリアルタイム処理を実現した。

 NTTの代表取締役副社長である宇治則孝氏は2011年2月22日の会見で、「スーパーハイビジョンの映像を安全かつ確実に送り、色々なイベントをライブで見ることができる時代になった」と述べた。NHKの専務理事・技師長の永井研二氏は、「我々は放送局なので家庭に入ることを意識している。最終的には70インチ型級の薄型テレビでスーパーハイビジョンの映像をご覧になれるように研究開発を進めている」と現状を報告した。NHKは2020年にスーパーハイビジョンの試験放送ができるように研究開発を進めている。

 NHK放送技術研究所の所長を務める久保田啓一氏は、今後のスーパーハイビジョンの実用化について、「放送でやるならまず衛星を考える。共用IP回線網ですべての家庭に配信というのは考えにくいが、イベントのパブリックビューイングといったことについては、2020年より前にできると考えている」と述べた。

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