米Qualcomm Inc.は,携帯機器向けの統合型プロセサ「Snapdragon」シリーズの次世代品を発表した(英文の発表資料)。新しいマイクロアーキテクチャのCPU「Krait」(開発コード名)を採用して動作周波数を最大2.5GHzに高めるほか,GPUの描画処理性能も引き上げる。
Kraitは,「スーパースカラ構造を採る,モバイル用途に最適化したCPUコア」(Qualcomm CDMA Technologies, SVP, Marketing and Product ManagementのLuis Pineda氏)であるという。28nm世代の製造技術を適用し,最大で2.5GHzで動作する。現行のSnapdragonシリーズが採用するCPU「Scorpion」と同様に,命令セット・アーキテクチャとしてARMv7を採用し,マイクロアーキテクチャを独自に開発した。「従来のCPUに比べて,演算性能が150%向上し,消費電力が65%減少する」(Pineda氏)と説明している。
Qualcomm社は今回,Kraitを採用した製品を3品種発表した。(1)最大2.5GHzで動作する4個のKraitコアと,2億ポリゴン/秒の描画性能を持つGPU「Adreno 320」などを集積するアプリケーション・プロセサ「APQ8064」,(2)2個のKraitコアとAdreno 225(描画性能は1億3000万ポリゴン/秒),LTEおよび3Gに対応するベースバンド処理回路などを集積した統合型プロセサ「MSM8960」,(3)1個のKraitコアとAdreno 305,LTEおよび3G対応のベースバンド処理回路などを集積した「MSM8930」,である。いずれも無線LAN,GPS,Bluetooth,FMの無線通信機能を内蔵する。
APQ8064に移動通信のモデム機能を搭載しないことについてQualcomm社は,「APQ8064のようなハイエンド品を適用する機器では,移動通信機能が不要で無線LANだけで構わない場合がある。顧客(機器メーカー)が選択できるようにしたいと考えた」(Pineda氏)と説明する。Qualcomm社は「APQ」の型番をつけた移動通信機能なしのアプリケーション・プロセサをSnapdragonの第3世代品でも提供しており,その「APQ8060」は米Hewlett-Packard社のタブレット端末「HP TouchPad」に採用されたという。
Qualcomm社は,MSM8960のサンプル出荷を2011年第2四半期に開始する。MSM8930とAPQ8064のサンプル出荷は2012年初頭を予定する。