企業会計基準の調査研究や開発を担当する財務会計基準機構(FASF)は2011年2月3日、第12回「基準諮問会議」を開催。IFRS(国際会計基準)と日本の会計基準(日本基準)の差異をなくす取り組みであるコンバージェンス(収れん)の進捗や、IFRSを策定しているIASB(国際会計基準審議会)の検討状況などを報告・議論した。基準諮問会議は、FASF内の組織で企業の会計基準を策定しているASBJ(企業会計基準委員会)の審議や運営を検討する。企業の経理・財務の担当者や学者などで構成している。

 諮問会議で最も議論になったのは、連結財務諸表と単体(個別)財務諸表の関係だ。特に単体財務諸表の取り扱いについて、委員から「単体財務諸表の取り扱いを早い段階に明確にすべきだ」や「単体財務諸表の会計基準の検討状況はどのようになっているのか」といった意見や疑問が出た。

連結先行による分離を危惧

 金融庁やASBJはコンバージェンスを進める上で、連結財務諸表に先行して適用する「連結先行」の考え方を打ち出している(関連記事:IFRS適用は連結決算が対象だと聞きますが、単体決算は関係ない?)。単体財務諸表の取り扱いについては別途、検討する方針である。こうした状況について、委員のなかから「連結先行をこのまま推し進めると、連結財務諸表と単体財務諸表が全く別のものになる連単分離になってしまうのではないか」との危惧が示された。

 単体財務諸表に関する委員からの意見に対しASBJは、「ASBJ内に10年9月28日、単体財務諸表に関する検討会議を設置した。現在、様々な面からメリット、デメリットを検討している段階だ」と説明した。「金融庁やASBJなど企業の会計基準を議論する場が多すぎて、意思決定が不明確なのではないか」との委員の疑問に対しては、「最終的にはASBJで決定する。金融庁の企業会計審議会でも、ASBJで議論をする趣旨の発言があった」と答えた。

 検討会議は非公開のため、議論の詳細な内容は明らかにされていないが、「財務諸表の作成者である企業側からは、現行の考え方である連結先行を支持する意見が多い」という。単体財務諸表は会社法や税制を踏まえる必要があるため、慎重な議論が必要になるとの理由からだ。

 加えて、IFRSが損益よりも貸借対照表を重視していることから、損益を重視する単体財務諸表を残すべきとの考えもあるという。一方で、財務諸表の利用者側からは、「連結財務諸表と単体財務諸表は一致させることが望ましいとの声が出ている」(ASBJ)。

「関係省庁と密に意見交換すべき」

 このほか単体財務諸表の扱いについて委員は、「単体の財務諸表は、会社法や税制と密接に結びついている。IFRSの議論を進める過程では、会社法や税法の監督官庁である経済産業省や法務省と密接に意見交換すべきではないか」との趣旨の意見を述べた。

 ASBJは、「すべて連結先行といっているわけではない。法律にはそれぞれの立法趣旨があり、会計基準か変わるからといって変えることは難しい。こうした議論を踏まえて、連結先行を打ち出している」と説明した。

 連結財務諸表と単体財務諸表の関係以外では、「IFRSの適用は上場企業全体を対象にしている。幅が広すぎるのではないか」といった意見や、「東京と地方の情報格差は大きいため、地方の関係者への情報を提供を今まで以上に進めてほしい」といった意見を各委員は述べた。

 「IASBへの意見発信を強化すべき」との委員からの意見に対して、ASBJは「IASBのコメント募集に対してコメントレターを出すだけでなく、年2回の定期的な会議を開催している。IASBのプロジェクトの担当者も日本に足を運びヒアリングしている」と連携を強調した。

 次回の基準諮問会議の開催は2011年7月を予定している。