日本体育大学世田谷キャンパスの図書館。学生がパソコンを自由に使える「パソコンエリア」が設けられている
日本体育大学世田谷キャンパスの図書館。学生がパソコンを自由に使える「パソコンエリア」が設けられている
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それぞれの区画ごとにホストパソコンが1台置かれ、7~8台のアクセスデバイスとディスプレイやキーボード、マウスが接続されている。アクセスデバイスとホストパソコンをつなぐのはUSBケーブル
それぞれの区画ごとにホストパソコンが1台置かれ、7~8台のアクセスデバイスとディスプレイやキーボード、マウスが接続されている。アクセスデバイスとホストパソコンをつなぐのはUSBケーブル
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ユーザーが使うディスプレイの背面に付けられたアクセスデバイス。マウスやキーボードを接続するPS/2端子などが設けられている
ユーザーが使うディスプレイの背面に付けられたアクセスデバイス。マウスやキーボードを接続するPS/2端子などが設けられている
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システムを担当する、管理部 電算課の荒井俊嘉氏(左)と、図書館課の衞藤俊介氏(右)
システムを担当する、管理部 電算課の荒井俊嘉氏(左)と、図書館課の衞藤俊介氏(右)
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 日本体育大学は2011年1月28日、2010年に竣工した新図書館のパソコン環境を公開した。1台のパソコンを複数人で同時利用するシステムを採用し、短期間での導入・コスト削減を実現したという。

 同大学が採用したのは、日本ヒューレット・パッカードのシンクライアントシステム「MultiSeat Computing」。1台のパソコンを、最大10人で同時利用できる。手のひらサイズの専用の機器(「アクセスデバイス」)を、同時利用する人数分用意し、親となるパソコン(ホストパソコン)にUSB接続。さらに各アクセスデバイスにディスプレイとキーボード、マウスを接続すれば利用できる。

 同大学の新図書館が開館したのは、2010年7月。以前の建物に比べて床面積が増え、学生からもパソコンの台数を増やしてほしいとの要望があった。ただ館内に設置するパソコンの検討を始めたのは同年5月で、「納期がとてもシビアだった。さらに、コストの圧縮も必要だった」(日本体育大学 日本体育大学女子短期大学部 管理部 電算課 主任 荒井俊嘉氏)。当初は通常のパソコンを導入しようとしていたが、導入・管理のコストや納期の面で問題があった。そこで白羽の矢を立てたのが、MultiSeat Computing。東京、横浜のキャンパスを合わせて、ホストパソコンを15台と約100台分のアクセスデバイスやディスプレイなどを導入した。

 納期は2カ月足らずと短かったにもかかわらず、大きな問題もなく導入が完了。コスト面では、「システムインテグレーションまで含めた費用で言えば、同じ台数を従来の方法で導入するのと比べて、5分の1程度」(荒井氏)に収まったという。保守料についてもメリットがあった。基本的にメンテナンスが必要なのは親となるパソコンのみで、「アクセスデバイスは買い換えても7000円ほどなので、保守は実施していない」(荒井氏)。このため、安価に済んだという。

 ただし、MultiSeat Computingを導入したことによる制限もあった。大きいのが、外部メディアが使えないことだ。USBメモリーなども使えないため、作成途中のデータを図書館外に持ち出そうとしてもデータをコピーできない。この問題は、学内に設けたネットストレージなどを併用することで解決した。DVDなどの映像メディアを視聴したいというニーズに対しては、別ブースを設けて対応した。

 1台のパソコンを複数人で共有する場合、気になるのは性能面。現時点では、特に不満は出ていないという。ただ図書館のパソコンは、それぞれのユーザーが思い思いに文書作成やWeb閲覧をするのが主な使い方で、「すべての学生が一斉に同じ作業をしないため、負荷が分散される」(荒井氏)。パソコン教室などで大勢の学生が同時に作業するような環境には、「MultiSeat Computingの導入は二の足を踏む」(荒井氏)のが正直なところという。

 今後の課題としては、USBメモリーなどの外部メディアの利用を可能にしたいと考えている。また「ホストパソコンが1台故障すると、それに接続している7~8台が使えなくなってしまう。こうした際のリカバリーをいかに早くするかは継続して考えたい」(荒井氏)としている。