写真1●米ウルフラム・リサーチのクリフ・ヘイスティングズ Academic Initiativesディレクタ
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写真2●入力の自由度の高さをデモを交えて解説するヘイスティングズ氏
写真2●入力の自由度の高さをデモを交えて解説するヘイスティングズ氏
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写真3●トーストとオレンジジュースの栄養価などを問い合わせた例
写真3●トーストとオレンジジュースの栄養価などを問い合わせた例
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写真4●赤血球に含まれるヘモグロビン分子の立体構造を表示させてみたところ
写真4●赤血球に含まれるヘモグロビン分子の立体構造を表示させてみたところ
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 ウルフラムリサーチアジアリミティッドは2011年1月27日、東京で報道関係者向け説明会を開催し、同社が2010年12月末に日本語版の販売を開始した科学および技術向け数学処理ソフトの最新版「Mathematica 8」の注目機能などを紹介した。Mathematica(マセマティカ)といえば、自然科学系学部の大学出身者なら、誰もが一度は論文などを通じて同ソフトで作った図版を見たことがあると断言できるほど有名なソフトウエアである。説明会では、筆者のように昔のMathematicaしか知らない人間にとって、かなり衝撃を受ける新機能が披露された。

 登壇したのは、米ウルフラムリサーチのAcademic Initiatives部門でディレクタを務めるクリフ・ヘイスティングズ氏(写真1)。新バージョンの8では、新しい関数などを含めると500以上にも上る新機能が追加されているが、それらの中からヘイスティングズ氏が特に注目すべき新機能として取り上げたのが、クラウドを使った「自由形式入力のサポート」と「データベース検索」機能だ。「Wolfram|Alpha」という別のサービスとして提供している機能をMathematica本体に組み込むことで実現している。

 Mathematicaの以前のバージョンでは、何らかの数学的な答えを得たい場合、ユーザーは関数やテーブルなどを決められたフォーマットに従い自分で入力して数式(プログラム)を作成する必要があった。例えば、xに関する二次方程式「x^2+2x+1=0」(^はべき乗を表す)を解きたい場合、
 Solve[x^2 + 2*x + 1 == 0, {x}]
のように記述するという具合だ。

 一方、バージョン8ではクラウドを使って意味を解釈する仕組みを導入したことにより、入力の自由度が大幅に高まっている。上記二次方程式なら、例えば
 Solve the equation x^2+2x+1=0
のように表記すれば、クラウド側で同じ数式として解釈され、同一の答えが得られる。

数学に詳しくない人でも使えるツールに進化

 sin(x)のグラフを描きたい場合なら、「plot sinx」「graph of sin(x)」「visualize the sine of x」のいずれでも同じsin波形のグラフが表示される。「mortgage calculator」などと入力すればローン計算もできる。この自由形式入力のサポートにより、「数学に詳しくない人でも、アイデアを入力するだけで数学の問題が解けるツールに進化した」(ヘイスティングズ氏)という(写真2)。

 自由形式入力以外でもクラウドを活用できる。古くからのMathematicaユーザーにとっては、こちらも衝撃的かもしれない。とにかく何でもいいので、思いついた物質名などを入力すると、クラウドを通じてウルフラム・リサーチが持つ膨大な科学技術系情報のデータベースからデータを引き出して利用できる。

 実用性がどのくらいあるかはさておき、例えば「toast + orange juice」(トーストとオレンジジュース)と入力すると、直ちに合計のカロリーや脂質、塩分、たんぱく質の含有量などのデータが表示される(写真3)。「big mac」と入力すれば、ビッグマック(米マクドナルドのもの)の食品成分データが表示される。「caffeine structure」と入力すればカフェインの分子構造式が、「hemoglobin 3D structure」と入力すればヘモグロビン(赤血球中のたんぱく質)の立体構造が表示される(写真4)。