実際にクラウドサービスを利用している企業ほど、セキュリティへの不安は少ない――。調査/コンサルティング会社のアイ・ティ・アール(ITR)がユーザー企業を対象に実施した調査で、こうした“食わず嫌い”ともいえる状況が明らかになった。

 この調査はユーザー企業の情報システム関連担当者にクラウドサービスの導入状況や期待、不安などを尋ねたもの。このうち「クラウドに関する課題・不安」を問う設問では、「セキュリティ・情報漏洩への不安」を挙げる回答が最も多かった。「非常に意識している」との回答が59.5%もあった。「社外に情報を預けることへの不安」を「非常に意識している」とする回答者も43.5%と2番目に多かった。広義の「セキュリティ」への不安が、クラウド導入の障壁になっている現状が読み取れる。

 ただし、セキュリティに対する不安は心理的な面がいくぶん強いようだ。同じ調査結果から「非常に意識している」を4点、「やや意識している」を3点、「あまり意識していない」を2点、「まったく意識していない」を1点で指数化して算出した「不安度指数」(4点満点)を見ると、クラウドを実際に利用している企業とそうでない企業の間で認識に大きな隔たりがあったからだ。

 「セキュリティ・情報漏洩への不安」の不安度指数はクラウド利用企業が3.35だったのに対して、未利用企業は3.57と0.22ポイントも差があった。同様に「社外に情報を預けることへの不安」はクラウド利用企業が3.00、未利用企業は0.31ポイントも高い3.31だった(図1)。

図1●ユーザー企業の情報システム部門のクラウドに関する不安・課題
図1●ユーザー企業の情報システム部門のクラウドに関する不安・課題
項目によってはクラウド利用企業と未利用企業で「不安度指数(4点満点)」が大きく異なる
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 今回の調査結果を受けて2011年1月12日、主要IT関連メディアの代表者による討論会が都内で開催された。そこでは「企業情報システムを構築する上でクラウドが重要な選択肢になるなか、企業の情報システム担当者も意識改革を迫られている。一方でサービス事業者にはより積極的な情報公開が求められる」といった意見が相次いだ。

 今回の調査はITproをはじめとするIT系情報サイトの閲読者のうちユーザー企業の情報システム関連担当者を対象に実施した。2010年12月16日から12月26日にかけてインターネット上で回答を依頼し、419件の有効回答を得た。