写真1●接続料の申請について説明するNTT東日本の中川裕・取締役経営企画部長
写真1●接続料の申請について説明するNTT東日本の中川裕・取締役経営企画部長
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 NTT東西地域会社は2011年1月21日、ユーザーとNTT局間を結ぶ光アクセス回線の接続料の認可を総務省に申請した。2011年度から2013年度までの3年間に適用するもので、毎年度ごとの需要と原価の予測を基に段階的に低廉化する料金を設定した。

 1芯を1ユーザー専用で利用する「加入者光ファイバ接続料」は、NTT東日本の場合、2011年度に4194円(現行料金の-9%)、2012年度に3568円(同-23%)、2013年度に3380円(同-27%)。NTT西日本は同様に、4784円(同-3%)、4578円(同-7%)、3426円(同-31%)と最終的に現行料金の7割程度の水準に引き下げる。

 なお、フレッツ光などに使っているシェアドアクセス型の「光信号主端末回線」も同じように段階的に値下げし、2013年度にNTT東日本が2982円(同-29%)、NTT西日本が3010円(同-31%)となる。

「3年後にADSL並みの料金が実現可能な環境が整う」

 今回、料金を毎年下げていく方式を採用したことについて、NTT東日本の中川裕・取締役経営企画部長(写真1)は、「我々が回線を貸し出す事業者にとっても先々の料金水準が見えることで、事業計画を立てやすくなり積極的に参入してもらえるのではないか」と説明した。

 例えば、この申請料金が適用された場合、シェアドアクセス型の回線を借りてFTTHサービスを提供する事業者は、「1回線がカバーする約50世帯(東日本)のエリアで、2~3ユーザーを獲得すれば、回線部分の原価は実質1400~1500円になる」(中川取締役)。従来よりも「アクセス回線部分だけで、1ユーザーあたり400~500円の値下げが可能になり、中継ネットワークの低廉化を進めれば、合計1000円程度のコストダウンが見込める。その結果、ADSL並みの料金が実現する」(同)とした。

 ここで言う“ADSL並み料金”は、ブロードバンドと固定電話の料金を合算した水準を指す。現行のフレッツ光サービスの場合、1戸建て向けの月額料金が5460円で、ひかり電話の基本料が525円。合計すると5985円となる。「ここから単純に1000円の値下げが可能になるとすると、フレッツ・ADSLの月額料金3213円と加入電話の基本料1785円を足した合計4998円の水準になる」(中川取締役)という計算だ。

 ただし、実際にフレッツ光サービスのユーザー料金をその水準まで下げるかどうかについては、「そのときの競争状況や財務状況によって決めたい」と、明言を避けた。

他事業者の活用が進めばさらなる接続料低廉化も

 今回の申請では、接続料の適用期間内に実際にかかった費用と収入の差額を精算する「かい離額調整制度」についても新たな提案を盛り込んだ。

 具体的には、現行方式では過去3年間に生じた予測収入と費用の差額を次の3年間で回収する方式を採っているところを、年度ごとに精算する方式に変更するというもの。「光回線の需要拡大によって生じる接続料の低廉化効果を早く反映させたい」としている。

 光回線接続料は、現時点で予測できる需要とコストを基に計算した結果で設定するため、実際にかかった費用と収益には差が生じることになる。

 そこで今回は、「NTT東西だけでなく他事業者にも積極的に光回線を使ってもらえる接続料水準を設定した。これによって参入事業者が増え、予測以上に需要が拡大すれば、実績収入が予測収入を上回ることになる。その分は、次々年度分の接続料から割り引く。これによって、各事業者が需要を増やそうとするインセンティブが働く」と説明した。

 一方で、ソフトバンクが要望している「1分岐回線単位の貸出料金」については申請内容の中に設定しなかった。ソフトバンクは、最大8分岐するシェアドアクセス型の回線料金を、1分岐単位に分割して料金設定してほしいとしている(関連記事:「競争の進展が望めない」、光回線接続料でソフトバンクがコメント)。これに対してNTT東西は、「8分岐回線を収容するOSU(局側光回線収容装置)を複数の事業者で共用することになり、サービス品質の維持などでユーザーに迷惑を掛けるといった問題が多い。詳しくは情報通信審議会の議論で説明していく」とした。

 NTT東西の申請内容は今後、1月中に総務省が情報通信審議会に諮問し、3月末までに答申される予定である。