写真●環境クラウドビジネス推進タスクフォースの会長に就任した慶大・中村修教授
写真●環境クラウドビジネス推進タスクフォースの会長に就任した慶大・中村修教授
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 産官学共同で環境分野を中心としたインターネット利用の高度化を図る「環境クラウドビジネス推進タスクフォース」は2011年1月12日、設立総会を開き、正式に発足した。会長には慶応義塾大学環境情報学部の中村修教授(写真)が就任した。

 同タスクフォースは、街中や家庭に存在する無数の設備・商品・物体などにセンサーやRFIDタグを取り付け、インターネットを通じて情報を収集・分析することによって環境負荷軽減につなげることを構想している。IoT(Internet of Things、モノのインターネット)と呼ばれることもある。こうした取り組みの前提となる技術的課題や、セキュリティ、プライバシーなどの問題点を整理し、5月下旬までにガイドラインを公表する。

 センサーを使った情報を環境負荷軽減に生かす考え方は従来からあり、既に幅広く実用化されている。例えばカーナビゲーションに渋滞や交通規制情報をリアルタイムで提供するVICSシステムでは、幹線道路に街路センサー(光・電波ビーコン)を設置して渋滞状況を検知し、カーナビに配信。運転者に渋滞回避を促して環境負荷軽減につなげている。気象予報の分野でも、気温や雨量などの情報は全国のセンサーから収集・分析する仕組みがある。

 中村会長はこうした現状について「各分野のシステムが縦割りで作られていて、相互連携ができない問題がある。オープンなインターネット上で物同士が直接通信できれば、もっと別次元のビジネスが生まれるはずだ。この分野で、日本は世界的な競争に勝たなければならない」と説明した。

 例えば車と街路センサーが直接通信すれば、自動車の車種に応じた最適な運転経路を提案するなど、さらに環境負荷を軽減する可能性が開ける。ただし、インターネット上で様々な物体の相互接続を実現するには、セキュリティやプライバシー上の課題が付きまとう。中村会長は「もう一段のイノベーションを起こすためには、こうした課題の整理が必要。各企業が独自に取り組むのは困難なので、産官学連携して検討する」と話した。

「IPv4が枯渇しても、インターネットの発展は止まらない」

 無数の物体にセンサーを付けて相互に通信できるようにするには、無数の物体にIPアドレスを付与できるIPv6関連技術が重要である(関連記事)。中村会長は「(現行の)IPv4のグローバルアドレスはあと数カ月で枯渇する見込みだが、幸い、日本ではインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)や通信事業者側のIPv6対応にほぼメドがついた。IPv4が枯渇したからといってインターネットの発展が止まることは考えられない」と説明した。

 同タスクフォースの発起人は中村会長のほか、東京大学大学院情報理工学系研究科の江崎浩教授、NTTコミュニケーションズ、三井情報、三菱総合研究所の2個人・3社。当初は26企業・団体が参加し、主要ITベンダーのほか、ダイキン工業、大京アステージ、山武ビルシステムカンパニーなど空調・ビル設備関連企業が名を連ねた。

[環境クラウドビジネス推進タスクフォースの公式サイト]