総務省は2011年1月7日、V-Low帯を利用したマルチメディア放送の実現に向け、制度枠組みについての意見を公募するとともに、現時点における参入希望状況の調査を行うと発表した。参入希望調査の対象は、受託放送/委託放送の両方である。意見募集の期限および参入希望調査の調査票提出期限は、いずれも2011年2月1日である。

 V-Low帯は、地上アナログ放送の終了によって空く周波数の一部で、90M~108MHz(VHFの第1~第3チャンネルに相当)の18MHz幅を指す。総務省は、携帯端末向けマルチメディア放送に係る無線局の免許や委託放送業務の認定などについて、既に2009年8月28日に「携帯端末向けマルチメディア放送の実現に向けた制度整備に関する基本的方針」を公表していた。その中で、V-Low帯についても基本的方針が示されている。

 一方その後の2010年2月から同年7月まで、ラジオなど地域情報メディアの将来像について総務省の「ラジオと地域情報メディアの今後に関する研究会」で検討が行われ、V-Low帯のイメージを含む提言が行われた。総務省はこの研究会提言も参考に制度整備を検討しており、今回の意見募集はこの検討に合わせて行うものである。

 意見募集の内容は大きく10項目からなる。まずは、受託放送・委託放送の「放送対象地域について」である。研究会報告に基づいて、基本は県域として三大広域圏のみブロックとする案が提示されている。

 受託放送事業に関しては2項目ある。まず「各放送対象地域内における受託放送事業者の数を一とする」という案を示した。その上で、全国で1者とすべきか、各県ブロック単位で参入を募るべきか、について意見を募集している。

 委託放送事業について5項目用意した。音声や音楽の放送についてAM/FM放送のサイマルを希望する既存事業者が存在する一方で、独自の放送を行いたい事業者もいるという。そうした中で、放送の計画や受信端末の普及、音声放送が果たすべき公共性と提供主体などについて、意見を募集している。

 その上で、「委託放送事業者の帯域の割り当て単位をどうするのか」、「委託放送業務展開のための共通事業基盤について、受託放送事業者がいわゆるプラットフォームを含む事業基盤としての機能を委託放送事業者に提供することの是非とその提供機能について」など意見募集している。

 今回の意見募集で注目すべき事項として、第7番目の「委託放送事業者による災害情報の提供」がある。「V-Lowマルチメディア放送によって必要な災害情報が一人でも多数の国民に届くようにするための方策と、それを実現する事業展開の具体的計画や可能性、安全安心な社会システムの一部となり得る端末の開発普及の可能性」について意見を求めている。災害情報の提供は、研究会報告でも力を入れられていた点の一つで、これに関連する施策の行方如何が、この放送の可能性に大きな影響を及ぼしそうだ。

 第8番目の項目が「新聞電子版などの配信に対する放送規律と配信機会の公平について」である。V-Low帯を利用した放送の有力な用途の一つとして「新聞や雑誌を電子化したファイルの放送」が想定されている。委託放送事業者に放送法の規律が適用され委託放送事業者の番組準則が紙の新聞や雑誌の編集に影響を与えかねないという懸念への対応などが意見募集のテーマである。

 第9番目の項目として、V-Low帯を利用したマルチメディア放送の成否に重要なファクターとなるNHKの受託放送・委託放送事業への参入問題である。そして第10番目の項目として周波数オークションである。

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