AMDは2011年1月4日、デスクトップPC向けCPUの新モデルとして、Phenom II X4 975 Black Edition(以下BE)をラインアップに追加した。従来のPhenom II X4 970 BEの動作周波数を100MHz引き上げて、3.6GHzにした製品。6コア製品が備える「Turbo CORE」には対応しない。メーカー向けの卸価格は1000個ロット時に195ドル。日経WinPCはPhenom II X4 975 BEのサンプル品を入手。性能と消費電力を測定した。

3.6GHzで動作するPhenom II X4 975 Black Edition。
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 Phenom II X4 975 BEは、AMD製のクアッドコア製品としては最上位モデルになる。従来の同970 BEとの違いは動作周波数のみ。コアごとの512KBの2次キャッシュ、全コアで共有する6MBの3次キャッシュ、DDR3-1333/DDR2-1066両対応のメモリーコントローラーなどの仕様は変わらない。製造プロセスは45nm、TDP(熱設計電力、実使用上の最大消費電力)が125Wなのも、従来品と同じだ。基準動作周波数に対する倍率が可変で、規定以上の動作周波数で動かす、いわゆるオーバークロックも簡単にできる(オーバークロック状態は動作保証外)。パッケージはAM3でSocket AM3で利用可能。AMDは「次期仕様のAM3+ソケットとも互換性がある」としている。

 今回はこのPhenom II X4 975 BEと最近のAMD製CPU、Core i7-870とCore i3-540の性能や消費電力を比較した。テストに使用したパーツは以下の通りだ。

●テストに使用したパーツ
マザーボードM4A89GTD PRO/USB3(ASUSTeK Computer、AMD 890GX搭載)、GA-P55A-UD3R(GIGABYTE TECHNOLOGY、Intel P55搭載)
メモリーDDR3-1333 2GB×2
起動ドライブS599 100GB(ADATA Technology)
グラフィックスATI Radeon HD 4350搭載ボード(レファレンス)
電源ユニットSS-620GB(Sea Sonic Electronics、定格出力620W、80 PLUS BRONZE)
OSWindows 7 Ultimate 64ビット日本語版

フリーソフトの「CPU-Z」でPhenom II X4 975 BEの情報を表示したところ。
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 グラフ1は「Sandra 2011」(SiSoftware)のメモリー関連のテスト結果。転送速度を測る「B/F iSSE2 Memory Bandwidth」の「Integer」と「Float」の平均値と、「Cache and Memory」のデータ量256MBの値を示した。970と逆転して見えるが、これは誤差範囲といってよいだろう。動作周波数が100MHz上がった程度ではメモリー転送速度に影響しないことが分かる。

【グラフ1】「Sandra 2011」のメモリー関連テスト「B/F iSSE2 Memory Bandwidth」と「Cache and Memory」のデータ量256MBのときの結果。
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 グラフ2と3は、3D画像レンダリングのベンチマークソフト「CINEBENCH R11.5」(MAXON Computer)の結果。グラフ2がシングルスレッドの「CPU(シングルコア)」で、グラフ3はマルチスレッドの「CPU」だ。グラフはいずれも従来品のPhenom II X4 970 BEの結果を100%としている。X4 975の3.6GHzは、X6 1090T BEでTurbo COREが効いたときの動作周波数と同じ。仕様通り、X9 1090T BEとほとんど同じ結果となった。X4 970とX4 975は、シングルスレッド処理でもマルチスレッド処理でも、動作周波数の違い(3%弱)を反映した性能差になっている。

【グラフ2】「CINEBENCH R11.5」の「CPU(シングルコア)」の結果。Phenom II X4 975 BEは、Turbo COREが機能したときに3.6GHzになる、Phenom II X6 1090T BEとほぼ同じ値になった。
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