レーストラックメモリー実用化に向けた技術。「ドメイン」と呼ぶナノワイヤー上の磁気パターン領域を高速かつ精密に動かす(出典:米IBM)
レーストラックメモリー実用化に向けた技術。「ドメイン」と呼ぶナノワイヤー上の磁気パターン領域を高速かつ精密に動かす(出典:米IBM)
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 米IBMは米国時間2010年12月23日、ナノワイヤー上に微細な磁気パターンを記録する新型メモリー「レーストラックメモリー」ついて、高速かつ精密なパターン制御技術を開発したと発表した。これにより、ポータブルデバイスなどの記憶容量を現在の約100倍以上に向上するメモリーデバイスの実用化が近づいたという。

 このメモリーは、デジタルデータをナノサイズのワイヤー上の微細な磁気パターンで表現し、パターンを動かしてデータを読み書きする。このワイヤーを高い密度で集積すると、メモリーLSIとして利用できる。可動部品を使わないため耐衝撃性に優れ、低コストで製造でき、安定性・信頼性も高く、少ない消費電力で高速に作動するという。IBMは「実用化すれば、全世界で制作される1年分の映画をポータブル機器1台に保存できる」としている(関連記事:IBM,100倍以上の高密度化が可能な新型メモリー「レーストラック・メモリー」を発表)。

 IBMは、「ドメイン」と呼ぶナノワイヤー上の磁気パターン領域を高速かつ精密に動かすことに成功した。具体的には、電子のスピンを利用することで、時速数百マイルに相当する速さでドメインを動かし、目的の位置に原子レベルの精密さで停止できた。この速度とドメイン移動距離は従来のレーストラックメモリーと比べ飛躍的に増えており、より高密度かつ高速なメモリーの実現につながるという。

 研究成果の詳細は、米国の科学雑誌「Science」(2010年12月24日号)に掲載する論文「Dynamics of magnetic domain walls under their own inertia」(慣性の影響下にある磁壁の力学)で説明する。

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