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 ヤマハは、同社独自開発の音響データ通信技術「インフォサウンド(INFOSOUND)」の信号を地上デジタルテレビ放送の放送波で送信し、スマートフォンアプリで受信する、という実証実験を実施し成功したと発表した。

 インフォサウンドを利用すれば、テレビ放送の音声にデータを多重できる。中国放送とコンテンツ制作会社のアスコンの協力により2010年12月20日の放送休止時間(午前3時15分から4時15分)に実験は実施された。インフォサウンド信号をテレビ放送電波に乗せた実験としては、全国初の試みという。

 実施した実験は以下の通り。インフォサウンド信号(「音響ID」)を含む映像コンテンツを、広島県内一斉に放送電波で流し、中国放送の局内およびアスコンのオフィス内にある地上デジタル放送対応テレビ/レコーダーで受信した。その上で、テレビから再生される音声からスマートフォンの無料アプリ「インフォサウンドブラウザ(INFOSOUND BROWSER)」が音響IDを受信し、そのIDが指定するウェブページを表示することを確認した。

 今回の仕組みを応用すれば、例えば料理番組でレシピ情報を配信したり、アンケートを収集したり、CMやテレビショッピング番組でeコマースサイトに接続するなど、番組/CMと携帯端末が連携するサービスを行うことが可能になる。テレビ放送を使った情報発信ツールとして様々なサービスが考えられ、今後も引き続き、中国放送とアスコンとともに、放送波でのインフォサウンドの実用化を目指して、実験やトライアルなどの取り組みを行う方針という。

 「インフォサウンド」は、直接スペクトラム拡散技術を用いてデジタル情報を音響信号に変調してデータ伝送する。人間にはほとんど聞こえないものの、通常のスピーカーで再生できる可聴帯域内の高域(約18kHz以上)を利用する。伝送速度は最大約80bpsと低速ではあるが、耐ノイズ性が高く、10m以上の領域にデータを伝送することができる。既存の設備(スピーカー)を使用し、複数の受信機に同時にデータを配信すること(1対多配信)が可能となる。また、音が聞こえる範囲にデータが届くことから、スピーカーのボリュームでデータの到達範囲を制御できる。

 スピーカーから出た短い情報符号(音響ID)を携帯端末のマイクで受信し、サーバーでURL情報に変換する仕組みを用いることで、ユーザーはスピーカーに近づくだけでクーポンを受け取ったり、eコマースのサイトにアクセスして直接ショッピングができるなどのサービスを受けられる。今回の実験は、この音響IDを放送波に乗せて配布できたことを意味する。

 なお、インフォサウンドは、超薄型でフレキシブルな「TLFスピーカー」と組み合わせた新しい広告媒体の概念「サウンドサイネージ」として、2010年10月に開催された「CEATEC JAPAN」で披露している。

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