企業の会計基準などを決めている企業会計基準委員会(ASBJ)は2010年12月16日、第215回委員会を開催。IFRS(国際会計基準)へのコンバージェンス(収れん)を中心とする最新の「プロジェクト計画表」を承認した。コンバージェンス項目の「企業結合(ステップ2)」「無形資産」の公開草案を従来計画から3カ月延ばして11年3月公表としたほか、IASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)が11月に公表したワークプラン中間報告に対応して計画を更新した。早ければ12月17日にも公表する見込みだ。

 ASBJのプロジェクト計画表では、(1)既存の差異に関連するプロジェクト項目、(2)IASB/FASBのMOUに関連するプロジェクト項目、(3)IASB/FASBのMOU以外のIASBでの検討に関連するプロジェクト項目、(4)IASB/FASBの検討項目以外の項目、について11年12月までの計画を示している。

 (1)はIASBとの合意(東京合意)に基づき、IFRSと日本基準の差異解消に向けたプロジェクト。多くの項目が完了しており、残るは「企業結合(ステップ2)」「無形資産」の二つ。企業結合は、EU同等性評価対応を主眼とするステップ1と、それ以外の差異解消を目指すステップ2に分けて進めている。

 今回の計画表では、「企業結合(ステップ2)」「無形資産」ともに公開草案の公表時期を従来は2010年12月としていたのを3カ月ずらして、11年3月とした。「単体財務諸表での扱いなどについて、議論が続いているため」とASBJは理由を説明した。基準の最終化を11年6月とする計画は変更していない。

 IASBとFASBによるIFRSコンバージェンスプロジェクト(MOU)にかかわる(2)や、それ以外のIASB/FASBまたはIASBによる活動にかかわる(3)では、主にワークプラン中間報告における変更に対応して、計画を見直した。ワークプラン中間報告では一部のプロジェクトを11年6月までに優先的に完了させることを表明している。

 これに伴い、(2)の「財務諸表の表示(フェーズB関連)」「負債と資本の区分」、(3)の「引当金」については今回、具体的な計画を示していない。いずれもIASB/FASBは11年6月以降に審議を再開する予定としている。このほか、10年12月の公表を予定していた(2)の「収益認識」の論点整理、「金融商品(分類と測定:金融負債)」の検討状況の整理、「退職給付(ステップ1:退職給付債務など)」の最終化はいずれも11年3月となった。

 第215回委員会ではプロジェクト計画表の刷新に加えて、(2)の「リース」の論点整理の案と、(4)の「四半期」の公開草案の案を承認した。「リース」の論点整理は、IASB/FASBが10年8月に示した新たなリース基準の公開草案を対象としたもの。借り手側の使用権モデル、貸し手側の履行義務/認識中止アプローチなど、「リース会計について従来の考え方と異なる新しいモデルを提示している」(ASBJ)ことに関して、論点を整理して提示している。11年3月9日までコメントを募集する予定。

 「四半期」は四半期報告制度の簡素化を目的としたもの。損益計算書(包括利益計算書)を累計情報のみにする、第1・第3四半期のキャッシュフロー計算書を免除する、注記事項を簡素化する、といった内容を打ち出している。10年6月に閣議決定した「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ」の金融戦略で、「四半期報告の大幅簡素化」を打ち出したことに対応している。

 公開草案として「四半期財務諸表に関する会計基準(案)」「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針(案)」に加え、関連する基準に関する改定案を提示する。コメントは11年1月25日まで受け付け、2月にコメントを分析して、3月中旬の委員会で最終化する予定。適用開始は11年度第1四半期(4~6月)を見込んでいる。

 ASBJがプロジェクト計画表を公表するのは、07年12月、08年9月、09年9月、10年4月、同9月に続いて今回が6回目。東京合意の期限であり、IASB/FASBの共同プロジェクトの一応の期限でもある11年が近付いており、計画刷新の頻度が高まっている。