DVDの暗号技術を回避して映像コンテンツを複製する行為が違法化される見込みとなった。ゲーム機の保護技術を回避して違法ゲームソフトを遊ぶ行為も規制対象となる。文化庁は、これらの項目を盛り込んだ著作権法改正案を、2011年の通常国会に提出する意向である。

 文化庁が著作権法改正案の土台にする報告書(文化審議会 著作権分科会 が策定予定)に盛り込まれることになった。2010年12月3日の法制問題小委員会の第11回会合で、小委員会に設置された技術的保護手段ワーキングチームが検討結果を報告した。これに対し、法制問題小委員会の構成員からいくつか意見が出たが、大きな修正を要求する声はなかった。

 現行の著作権法は、音楽CDといった著作物にコピー制御信号を付加して複製を制御する技術(非暗号型技術)の回避行為を規制対象とする一方で、DVDなどに採用されている暗号技術やゲーム機の保護技術の回避行為は対象外としている。ワーキングチームは、「暗号技術やゲーム機の保護技術についても対象とすることが適当である」と報告した。

 規制の仕方については、回避に伴う行為が著作権(複製権や公衆送信権など)に侵害するか否かで合法か違法かを判断すべきという見方を示した。例えば、パソコンソフトを使ってDVDの暗号技術を回避し、権利者に無許諾で映像コンテンツを複製した場合は、「複製権の侵害」として規制対象にする。暗号技術を回避できるパソコンソフトを所持するだけでは、違法とはみなさない。今回の規制強化について、「著作権の対象とならないものにまで保護を認めるものではない」としており、著作権法の枠内にとどまるものと位置付けた。

 著作権法における刑事罰と権利者の民事的救済手段については、著作権法改正後も、「現行法と同様の内容が妥当」とした。現在は、保護技術(現行法では非暗号型技術)を回避できる装置やプログラムの公衆への譲渡などをした場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が課せられる。また、保護技術を回避しての著作物の複製は私的利用目的であっても違法としており、この場合は権利者が差し止め請求権を行使できるようにしている。

 法制問題小委員会は意見募集をしたうえで、2011年1月に報告書案を最終決定する。その後、親会である著作権分科会に報告する。

 今回の法改正の恩恵を受ける業界としては、例えばゲーム業界が挙げられる。ゲーム業界では、「マジックコンピューター」(マジコン)と呼ばれる装置の普及が問題になっている。マジコンは、ゲーム機の保護技術を回避して違法なゲームソフトを起動する機能を持つ。マジコンの登場による違法ゲームの流通により、ゲーム業界の国内における被害額は2004年から2009年の累計で9540億円にのぼると試算されている。法改正後は、保護技術を回避してのマジコンによる違法ゲームの利用は規制対象となる。