総務省で開催された「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」
総務省で開催された「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」
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議論の継続を訴えたソフトバンクの孫正義社長
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 総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」は2010年11月30日、「光の道」構想の実現に向けた最終案をまとめた。光の道は、2015年をめどに全国に高速ブロードバンド回線を整備する構想。最終案の内容は11月22日に公表した骨子案とほぼ同じものとなった。

 懸案となっているNTTの在り方については、NTT東西のアクセス回線部門について人事・情報・会計の壁を設ける「機能分離」が現実的とした。ただ、最終案には機能分離など施策の実施時期について具体的な記述がなく、構成員からは「5年後も同じ議論をすることになるのでは」と懸念する声が出た。

 光の道の実現に向けた基本方針は、通信事業者間の公正な競争環境を確保し、サービスの低価格化や高機能化を促すこと。そのためには、公社時代から使われているNTT東西のアクセス回線部門の設備を、ほかの通信事業者各社が利用しやすくする必要がある。最終案で提示した方法は3通り。アクセス回線部門をNTTグループから別会社化する「資本分離」、NTTグループの傘下として別会社化する「構造分離」、分社化せずに他部門との間で人事・情報・会計の区切りを明確化する「機能分離」である。そのうえで、現時点では機能分離が「現実的かつ効果的」と記した。

 最終案は、通信事業全般に関する問題と対処の方針を盛り込んでいる。ただ、具体的な実施時期が明確化されておらず、その点に議論が集中した。例えば、NTTの機能分離について、実行時期は記載がない。ある構成員は「目標の数値は盛り込まないのか」、現時点で時期の判断が難しいのであれば「競争環境をどう評価するのか明言するべき」と追求した。このほか、NTT東西の光ファイバー回線をほかの通信事業者が使う際の接続料については、見直しの検討を平成23年度以降に検討を開始するとしているが、「具体的な時期の目標や考え方があってもいい」という声が上がった。

「まだ議論は終っていない」と孫社長

 ソフトバンクは従来から光の道構想の実現に向けた提案を行っている。NTTのアクセス回線部門に対し、通信事業者が共同出資して新会社を設立、メタル回線を撤廃してFTTH回線に置き換えるという内容だ。光の道の最終案は、このソフトバンク提案を「その実現には不確実性が高い」と記している。

 会議後に報道陣の前に現れた孫正義社長は、数値目標などが不明瞭な最終案に対し「何も決めない、全部先送りという日本の悪い部分が出た。このようなことではほかの国に取り残される」「何の数値目標も決めずに1年2年と経ち、2015年になって何も変わらず、あの議論は何だったのかと後悔するのは耐えられない」「なぜ事業をなす者が議論の場に一人も入っておらず、傍聴席で聞いていなければならないのか」などと批判。「分社化なしというのはタスクフォースの一意見であり、国会で議論するべき。まだ議論は終っていない」と自社案を主張していく考えを述べた。

 LTE(long term evolution)など次世代の無線技術が登場したことで、場所によっては必ずしもFTTH回線が必要ではないという見方もある。それに対して孫社長は「5年後には(大容量の高解像度映像をダウンロードする)スマートテレビの時代が来る。1台のスマートテレビは1台のLTEの無線基地局の帯域が必要となる」とし、全国に光回線をくまなく普及させる意義を訴えた。