国内金融大手が中国・大連にシステム開発やデータ処理業務などを手掛ける現地法人を設立する動きが広がっている。野村ホールディングスは子会社が担う顧客口座や支店の経費データの入力業務の一部を大連の現地法人に移管する。損害保険ジャパンもシステム開発などを手掛ける現地法人を大連に設立した。日本の金融大手は、人件費が安く日本語人材も豊富な大連にデータ入力やシステム開発業務を移管することで、IT関連コストの削減を狙う。

 野村ホールディングスは2011年5月、全額出資の子会社「野村信息技術(大連)」を設立する(関連記事)。証券仲介の代行業務などを手掛ける子会社の野村ビジネスサービスが担う業務の一部を移管し、今後5年で少なくとも50億円の経費削減を見込む。

 設立場所は、大連における第二期のソフト開発拠点である「大連アセンダスITパーク」。シンガポールの不動産開発会社のアセンダスなどが出資し、2007年9月に開業した。第一期の「大連ソフトウェアパーク」には、IBMやパナソニック、中国の大手システム開発会社である東軟集団(Neusoft)など約900社が拠点を構えており、技術者の数は8万人を超える。大連市は2013年をメドに、大連アセンダスITパークや大連ソフトウェアパークを含む「旅順南路ソフトウェア産業ベルト」の市場規模を2009年度比で2倍超の1000億元(1兆2000億円)、技術者を20万人に拡大させる計画を立てている。

 損保ジャパンは2010年3月、業務アプリケーションの開発やデータ処理業務を手掛ける「日本財産保険系統(大連)」の営業を開始した。システム子会社の損保ジャパン・システムソリューションが7割、日立製作所が3割を出資する。2015年3月までに国内のシステム開発費用と比較し、年間12億円のコスト削減が可能と試算する。

 国内金融大手が大連にIT関連業務を担う現地法人を設立する狙いは、コスト削減にある。金融機関は他業種に比べIT関連コストがかさむ。日本語を使える人材が約30万人と豊富で、「人件費が日本に比べ7割安い」(損保ジャパン・システムソリューションの清水達紀取締役常務執行役員)大連にIT関連業務の一部を移すことで、大幅なコスト削減が可能と判断した。今後、金融大手でこうした動きが一層拡大しそうだ。

■変更履歴
第3段落を追記しました。[2010/11/29 10:09]