マイクロソフトは2010年11月25日と26日の両日、東京都内で企業向けイベント「The Microsoft Conference + Expo Tokyo」を開催した。「クラウド」をテーマに、初日の基調講演には樋口泰行社長が登壇し、企業向けのクラウド新戦略を語った。2日めの基調講演に登壇したのは、大場章弘執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長。Windows Phone 7のソーシャルメディア連携機能や、Windows Azureのユーザー事例などを紹介した。

「マイクロソフトはクラウドに本気」と樋口社長

写真1●マイクロソフトの樋口泰行社長
写真1●マイクロソフトの樋口泰行社長
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 「今回のイベントは、クラウドに本気であると感じてもらうためのものだ」。樋口社長は基調講演の冒頭、こう述べた(写真1)。同社は今年3月、米本社のスティーブ・バルマーCEOがクラウドへ全力投球することを宣言。その戦略に従って強化・開発してきた新サービスを、日本で一斉に披露するのが今回のイベントというわけだ。「マイクロソフトは情報システムのプラットフォームを提供する会社として、パートナー企業とともに、顧客企業がグローバル展開するための基盤を構築する手伝いをしたい」(樋口社長)。

 初日の基調講演では新サービスのデモだけでなく、多数の顧客企業やパートナー企業を披露することに特に力を注いだ。「マイクロソフトが提供するパブリッククラウドだけでなく、顧客企業のプライベートクラウド、パートナーが構築するパートナークラウドなど、いろいろな形の選択肢がある」(樋口社長)ことを示す狙いだ。多くのパートナー企業や顧客企業が登場したせいで、基調講演の時間は予定を30分以上もオーバーしたほどだ。

写真2●リクルートの柏木斉社長
写真2●リクルートの柏木斉社長
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 顧客企業として登壇したのは、リクルートや伊藤病院、三和コムテック。リクルートは柏木斉社長(写真2)が登壇し、同社の経営戦略とITの重要性を語った。同社はマイクロソフトのグループウエアサービス「BPOS」を導入している。

 「当社は就職から進学、結婚と、情報を提供する分野を横に広げてきた。大量の情報に対応すること、情報の受け手である個人が望むタイミングで届けること、受け手のニーズにマッチすること、情報を届けるコストが見合うこと。これらを満たすため、ITインフラの重要性は増している」。柏木社長はこう述べて、「時代のニーズにあったシステムを短期間かつ低コストで作るため、クラウドの活用は重要だ」と続けた。

 マイクロソフトに対しては、リクルートが中国をはじめとしてグローバル展開を進めていることを述べつつ、「国内だけでなくグローバル展開をするときにサポートをしてほしい」と期待を述べた。

 パートナー企業として登場したのは、帝国データバンク、パソナ、弥生、NTTデータ、富士通、日立製作所、NECの各社。いずれもマイクロソフトのクラウドを使ったサービス展開を計画している。

帝国データバンクの企業情報をCRM Online上で提供

写真3●帝国データバンクは自社のもっている企業情報をDynamic CRM Onlineを使ってシステムとして提供する
写真3●帝国データバンクは自社のもっている企業情報をDynamic CRM Onlineを使ってシステムとして提供する
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 帝国データバンクが披露したのは、マイクロソフトが1月に開始する「Dynamics CRM Online」と連携した、企業情報照会サービスだ(写真3)。Dynamics CRM Onlineの画面から企業名を入力すると、帝国データバンクの企業情報データベースを検索し、結果を取り込める。「ユーザー企業には、取引先の信用情報を参照して、取引の可否判断やリスク評価などに使ってもらえる」(同社)。2011年2月にサービスを開始し、初年度で100社に導入することを目指す。

 このほか、弥生はWindows Azure上で動く会計パッケージのSaaS「弥生オンライン」を披露。NTTデータは同社のクラウド構築支援サービス「BizXaaS」の一環としてWindows Azureとの連携や移行支援コンサルティングを説明した。

 マイクロソフトは顧客やパートナーの紹介に加えて、新たに開始予定のクラウドサービスのデモも実施した。グループウエアとOfficeを月額料金で利用できる「Office 365」、統合コミュニケーションの「Lync」、CRMソフトのクラウド版「Dynamics CRM Online」、仮想化を基にしたクラウド基盤構築パッケージ「Hyper-V Cloud」などだ。

 一連の新サービスで同社が強調したのが、競合企業との差異化である。例えばOffice 365では、グーグルのグループウエアサービス「Google Apps」との比較を実施。Excelのファイルを読み込んで、グラフを問題なく再現できるか、マウスでファイルを操作できるかなどを比較した。Dynamics CRM Onlineでも、セールスフォース・ドットコムのSaaSからデータを取り込む機能を披露するなど、対競合を意識した強化をアピールした。