写真●民主党の議連ヒアリングで話すKDDIの小野寺正社長兼会長
写真●民主党の議連ヒアリングで話すKDDIの小野寺正社長兼会長

 「NTT東西の機能分離は一つの案として“あり”。ただ、きちんと分離されているのか検証することが重要だ」---。2010年11月24日に民主党の情報通信議員連盟が実施した事業者ヒアリングに出席したKDDIの小野寺正社長兼会長(写真)は、ヒアリング終了後の記者の質問にこのように答えた。

 総務省のICTタスクフォースは11月22日の会合で、「光の道」構想を実現する上でのNTTの組織形態として「機能分離」が最も現実的、効果的という骨子案を打ち出した(関連記事)。小野寺社長は、機能分離を一つのステップとして評価しつつも、「最大の問題は、会計上は社員の分計を経営者の意志で分けられること。機能を分離したものの、赤字をアクセス部門に押しつけられるようなことが起こりかねない」と懸念を示した。

 小野寺社長は監視体制をしっかりと築くことが重要と続ける。「タスクフォースのヒアリングなどで第三者機関が監視してもよいと言ってきた(関連記事)。本音を言えば、総務省には監視できる権限が与えられているので、もっと踏み込んでほしいところだ」(小野寺社長)。議連によるヒアリングの中でも小野寺社長は、公正競争のルールはかなり整備されてきたが、監視体制が不十分という点を主に訴えた。

 骨子案に盛り込まれた、線路敷設基盤のさらなる開放やNTT東西の子会社への行為規制の徹底については、「ずっとお願いしてきたことを盛り込んでもらった」(小野寺社長)と評価する。その一方で骨子案が示した、光ファイバの一分岐貸しについては、「設備競争とサービス競争ができるエリアをきちんと分けるべき。我々に一分岐を要求された場合、赤字でも受けられるかどうか」(小野寺社長)と設備事業者としての複雑な一面も覗かせた。

 議連によるヒアリングでは、ソフトバンクによるアクセス回線会社の別会社案について質問が出た。この点について小野寺社長は、「実は我々も99年のNTT再編の議論の時にアクセス回線会社の分離を一つの案として話した。ただ当時はほとんど光が敷設されておらず、新たに整備するのであれば分社化して効率的にできる可能性があるとした。今は光が整備され、設備競争が進展している。シンガポールやオーストラリアのように光ファイバがまったく無い場所にひくのとは状況がまったく異なる」と説明。電力系事業者やCATV事業者、KDDIなど、多様な事業者が全国で進めている設備競争によって「光の道」実現に貢献できるとした。