「光の道」構想について議論をしている総務省のICTタスクフォース
「光の道」構想について議論をしている総務省のICTタスクフォース
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報道陣を前に骨子案について意見を述べたソフトバンクの孫正義社長
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 総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」は2010年11月22日、2015年までに全国に高速ブロードバンド回線を整備する「光の道」構想の実現に向けた骨子案をまとめた。

 議論となっているNTT東西のアクセス回線部門の扱い方については、NTT東西の中で人事や会計の壁を設ける「機能分離」をするべきという方針を示した。ソフトバンクが主張しているNTTのアクセス回線部門(ボトルネック設備保有部門)を別会社とする案は「不確実性が高いのではないか」と記した。

 同骨子案では「光の道」構想の実現に向けて推進するべき政策として、(1)未整備地域のIT環境の整備、(2)NTTの在り方を含めた競争政策、(3)規制改革によるIT活用推進の3つを掲げている。このうち、最大の懸案事項は(2)のNTTの在り方。現状でNTT東西のFTTH回線シェアは75%以上と高く、他事業者との公正な競争環境の整備が必要と考えられている。そこでICTタスクフォースは、NTT東西のアクセス回線部門の設備を、他事業者がNTTと同等の条件で利用できるようにするための議論を進めてきた。

 アクセス回線部門は、NTTの基地局からユーザー宅へ回線を敷設する事業を運営し、電柱や管路などの設備を保有している。他事業者がアクセス回線部門の設備をより柔軟に利用できるようになれば、サービスの高度化や料金の低廉化につながる。

機能分離で人事や会計に壁を設ける

 骨子案では、NTTのアクセス回線部門に対する措置として「資本分離」「構造分離」「機能分離」の3つを示した。資本分離は、アクセス回線部門をNTTグループから別会社化する方法。構造分離はNTT持ち株会社のもとにNTTグループの傘下として別会社化する方法。機能分離は、アクセス回線部門と他部門との間で人事や会計の区切りを明確化する方法である。

 これらの中で「現時点においては、最も現実的かつ効果的と考えられる」として、「機能分離」がふさわしいとする方針を示した。設備やサービス競争の促進、国民のアクセス権の保証、NTT株主への影響、実現までの時間などを総合的に判断した結果であるという。

 同日に開催されたICTタスクフォースの議論の場では「機能分離」を妥当とする案について、賛成する構成員からは「2015年までに光の道を整備するには、構造分離ではとても間に合わない。今確実にできる機能分離で競争施策を進め、状況を見守るべき」との声が出た。資本分離や構造分離で「独占的な事業体ができて、設備競争の促進が阻害される。機能分離がもっとも現実的かつ効果的」という意見もあった。

 半面、ほか構成員からは「結論が踏み込み過ぎている。資本分離、構造分離、機能分離と3案があるという程度に留めるべき。政治の判断に委ねるのが本来のあるべき姿」と慎重論も寄せられた。

骨子案では“天下国家のためにならない”

 ソフトバンクは、NTTのアクセス回線部門を資本分離した上で、各通信会社が出資して新会社を設立、メタル回線をFTTH回線に置き換える案を出していた。骨子案では、投資額、維持費、工事力の確保などの諸課題から「不確実性が高いのではないか」と記している。ある構成員からは、「ソフトバンクが試算した設備投資額の3.1兆円は、別の通信事業者に聞くと2~2.8倍になるという。数字はなかなか正しく判断できないものの、リスクのあるところにそこまで国は踏み込めない」と考えを述べた。

 ソフトバンクは11月18日に複数の新聞各紙に意見広告を掲載するなど、ソフトバンク案の採用に向けた働きかけを強化してきた。会議を傍聴した孫正義社長は、報道陣の前で「2015年の光の道実現に向けて何ら答えになっていない」と不満を訴えた。構造分離や機能分離の案は「接続料1400円、期間は2016年まで、対象は全国の人々、税負担なしというソフトバンク案の4項目が実現できるとなれば、その時点で初めて選択肢に上がる」と反対したうえで、改めてソフトバンク案のメリットを強調。「国会で議論してもらえるように働きかける。実現可能性のある選択肢が議論されずに葬り去られるのは天下国家のためにならない」(孫社長)と主張を続ける意向を示した。

 同タスクフォースは、11月末までに最終的な報告書をまとめる予定である。