写真●金融ITイノベーションフォーラム2010 Autumnで講演する新日本有限責任監査法人の英公一・常務理事
写真●金融ITイノベーションフォーラム2010 Autumnで講演する新日本有限責任監査法人の英公一・常務理事
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 「既に100を超える国々がIFRS(国際会計基準)の強制適用・任意適用を認めている。スポーツにたとえれば、オリンピック・ルールに近い」。新日本有限責任監査法人の英(はなぶさ)公一・常務理事金融部門長(公認会計士)は2010年11月19日、『金融ITイノベーションフォーラム 2010 Autumn』の特別講演で、「金融機関経営への国際会計基準(IFRS)のインパクト」と題して話した(写真)。

 英氏は「主要国でIFRSへの態度を決定していないのは日本と米国だけ。日本の金融庁は既にIFRSへとかじを切っている。独自の米国会計基準を持つ米国も『自分だけオリンピックに参加しない』ようなことはもはや難しいだろう」と、IFRSをスポーツの国際ルールにたとえて分かりやすく説明。「国際社会では国ごとの多数決で物事が決まる。柔道のルールでさえ日本は主導権を取れず、他国にメダルを奪われている。IFRSについても『ルールを制する者はゲームを制する』と考えるべきだ」と強調し、日本企業の取り組みを促した。

 続いて、「貸倒引当金」「持ち合い株式」「償却原価と減損」「退職給付関連」など、日本企業がIFRSを“制する”うえで課題になる論点を示しながら詳説した。特にIFRSでは経営者による投資家への説明責任が問われることを強調。「日本企業の投資家向け開示は、なるべく情報を開示しないことが“開示”だった。オリンピック・ルールになると欧州やインドの企業と比較されて『開示が足りない』と指摘されるようになる」と話した。

 金融機関や上場企業で会計システム構築にかかわる人に向けたアドバイスとして、「IFRSと日本の税法の両方に対応した会計システムの構築や、固定資産データを過去にさかのぼって加工できるようにするなど、ITが果たす役割はとても大きい。ただし、経営者が何を投資家に説明したいのかを考えてからITを作る順序でなければ混乱する」と警鐘を鳴らした。