写真●金融庁の三國谷勝範長官
写真●金融庁の三國谷勝範長官
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 「世界では100年に1度の金融危機と言われているが、日本はバブル後に金融危機があったので過去10数年で2度目の危機だといえる。この経験が生きているため、現在国際的な金融規制改革で論点になっていることについて、すでに日本が先取りしている部分は多い」。金融庁の三國谷勝範長官(写真)は2010年11月19日、『金融ITイノベーション2010 Autumn』の基調講演で、「最近の金融行政を巡る課題について」と題して語った。

 三國谷長官はG20などで議論している国際的な金融規制改革の論点として、(1)国際的に活動する銀行の自己資本・流動性規制の強化、(2)システム上重要な金融機関に関する報告、(3)格付け会社の規制・監督、(4)ヘッジファンドの規制・監督、(5)店頭デリバティブ市場の規制・監督、(6)金融セクターへの負担金、を挙げた。このうち(3)~(6)については「金融商品取引法などにより日本はすでに対応済みだ」(三國谷長官)とした。

 (1)の国際的に活動する銀行の自己資本・流動性規制の強化については、「これまで1~2年かけて各国と議論を重ねてきたことで、一定の成果が出た」(三國谷長官)。具体的には、自己資本比率規制を強化し、「繰延税金資産や無形資産などの控除項目を見直して質を、最低比率の見直しなどにより量を強化した」(同)。

 (2)のシステム上重要な金融機関に関する報告について三國谷長官は「これから来年にかけて議論する」と話した。(2)は、「金融機関の規模が大きいため、経済への影響を考慮すると破綻させることができない」という問題に対処するための手法などを検討している。三國谷長官は「一律の対応をするのではなく、経済や実態に配慮した対応が必要」と語った。