総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」は2010年11月18日、「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」(周波数WG)の第9回会合を開催した。

 周波数WGは、ワイヤレスブロードバンドの周波数確保を検討するために5月に発足。主に携帯電話事業者が注目する700M/900MHz帯の再編を対象に議論を進めてきた。周波数WGは8月末の会合で中間とりまとめを提出。再編を加速するために、既存システムの移行費用を新規利用者が負担するような考え方を示した(関連記事)。また政府が9月10日に閣議決定した「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」の中にも、「電波の有効利用のための制度の見直し」として、「再編に要するコストについて、再編後の周波数を新たに利用する者が、市場原理を活用して負担するなど、オークション制度の考え方も取り入れた措置について平成22年度に検討、結論を得、平成23年度に措置する」という一文を盛り込んでいる(関連記事)。

「700M、900MHz帯の移行費用はそれぞれで1000億円程度」

 これら基本方針を踏まえて周波数WGでは、700M/900MHz帯の具体的な再編方針を固めるべく、9月下旬から複数回にわたって、関連する事業者への非公開ヒアリングを実施した。ヒアリングの対象は、移行対象となっているFPUやラジオマイク、MCA無線、パーソナル無線、RFIDなどのシステムの関係者、移行後の跡地利用を希望している移動体通信事業者5社。

 今回の会合では、これら非公開ヒアリングで出た主な意見が報告された。まず移行対象システム関係者からは、「移行には必ずしも賛成しないものの、移行する場合は、経費を携帯電話事業者などが負担することが必須」「移行経費は、移行方法や移行先の周波数帯にもよるが、700MHz帯、900MHz帯でそれぞれ1000億円程度になる見込み」といった意見があったという。

 周波数帯別の意見としては、まず700MHz帯は、移行先の決定は開発・実証・検証など2~3年ほど必要で、その結果を踏まえて、移行経費の負担があれば、FPUは早くて3年程度、ラジオマイクは5年程度で新システムの整備が可能という見解が寄せられた。

 900MHz帯では、移行経費の負担があればMCA無線は早くて5年程度、RFIDも5年程度で移行できるという見解が示された。特にRFIDは、移行によって海外の割り当て状況に合わせられるメリットもあるという。

 一方の移動体通信事業者5社は、「700MHz帯、900MHz帯それぞれの帯域でペアバンドを作ることに賛成」「再編を迅速に進めるために移行経費を負担することは理解」という意見を示した。移行スキームに関しては、「移行費用額を適正なものにするため、負担する費用の範囲はあらかじめ確定すべき」「適正に移行を推進するための協議の仕組みが必要」「比較審査方式を基本として、移行費用の負担可能額を財務的裏付けと併せて提示させる仕組みが必要」といった意見もあった。

 参考としてあげられた欧米型のオークションに関する考え方については、「オークション落札額は最終的にサービス提供料金に反映される。国民の十分な理解を得るべき」「単純なオークションでは資金力のある事業者が落札する可能性が高く、新規参入による競争促進と整合性がない」など、オークション導入に対して慎重な意見が寄せられた。