「下り最大42MbpsのDC-HSDPAの導入に伴い、既存のHSDPA基地局の回線容量を2倍にする工事を進めていく。この工事が済んだ基地局では、DC-HSDPAが使えるようになるだけでなく、既存のHSDPA方式で接続する『Pocket WiFi』の通信速度も改善する。DC-HSDPAの導入スケジュールと同じく、2011年3月末までに人口カバー率で40~50%のエリアで工事を進めていく――」。イー・モバイル 執行役員副社長の阿部基成氏はこのように語り、加入者増に伴うモバイルルーター「Pocket WiFi」の通信速度低下への対策を講じていく考えを示した。2010年10月28日に開催されたDC-HSDPAサービス「EMOBILE G4」の発表会で、記者からの質問に対し明らかにした。

 同社は3G回線を利用したモバイルルーター「Pocket WiFi」を、2009年11月に発売。パソコンやスマートフォン、携帯型ゲーム機などを、どこでも無線LAN経由でインターネットに接続できる環境をほかの通信事業者に先駆けて提供したことで、契約者数を2009年10月末の198万件から、2010年9月末には274万件まで増やしている。半面、ユーザー数の増加に伴い、東京などの大都市圏の一部エリアでは同社の3G回線につながりにくくなったり、通信速度が以前より低下したりという現象もみられる。

 阿部副社長の発言は、こうした状況が一部で起きていることを認めるとともに、混雑の原因が基地局に収容している回線容量にあるとして、その改善に努めることを示したものである。

 モバイルルーターを使った3Gのデータ通信サービスをめぐっては、NTTドコモもバッファロー製のモバイルルーターを発売。月額料金の大幅な割引などで攻勢を強めている。これについて阿部副社長は、「当社の3GサービスはNTTドコモに比べ弱電界というのはあるが、速度の面では当社に優位性があると思っている」と語り、十分対抗できるとの認識を示した。