写真1●シスコシステムズ 専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏
写真1●シスコシステムズ 専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏
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 シスコシステムズ(以下、シスコ)は2010年10月26日、同社製品の上で動作するWAN高速化/サーバー仮想化向けのソフトウエア群と、スイッチ、ルーター、セキュリティアプライアンスなどの新製品を発表した。

 同社専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏(写真1)は、「これは当社が約1年前から提唱している『ボーダレスネットワーク』を構成する製品群の第三弾。これでボーダレスネットワーク向けに、製品を一通りリフレッシュできたことになる」と語る(写真2)。今回発表した製品の中には一部、すでに販売中のものがあるが、ボーダレスネットワークの第三弾として改めて解説した(末尾の表を参照)。

写真2●「ボーダレスネットワーク」の全体像。太い線で囲ってある部分が、今回発表された製品が該当するところ
写真2●「ボーダレスネットワーク」の全体像。太い線で囲ってある部分が、今回発表された製品が該当するところ
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写真3●アプリケーションの効率化、高速化を目指す製品群「Application Velocity」の概要
写真3●アプリケーションの効率化、高速化を目指す製品群「Application Velocity」の概要
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 シスコではアプリケーションの効率的な管理、パフォーマンス向上などに役立つ製品を「Application Velocity」と総称する(写真3)。今回発表したWAN高速化/サーバー仮想化向けのソフトウエアは3種類ある。「Cisco WAAS Express」「Cisco WAAS on the ISR G2 Services-Ready Engine(以下、WAAS on SRE)」「Cisco Unified Computing System Express(以下、UCS Express)」で、いずれも「Application Velocity」の一部と位置付けている。

 この3製品は2009年から販売しているルーター「Cisco ISR G2」上で動作する。ISR G2は筐体にモジュールを追加することで、様々な機能を拡張して使えるルーターだ。

ブランチオフィスのサーバー運用を効率化

 WAAS ExpressとWAAS on SREはWAN高速化を実現するためのソフトウエアである。WAAS ExpressはIOSの一機能となる。TCPフローの最適化、ペイロードの圧縮、送信データの重複排除などの手法で、レイヤー4までのWAN高速化機能を提供する。

 一方、WAAS on SREは、ISR G2に取りつけられるサーバーモジュール「Cisco Services Ready Engine(SRE)」上で動作する製品。機能はシスコがこれまでアプライアンスとして提供してきたWAN高速化製品と同じで、レイヤー4~7までに対応する。WAAS Expressで提供する機能に加えて、CIFS、MAPI、HTTP、HTTPSなどを利用する様々なアプリケーションの最適化機能を備える。

 UCS Expressは、SRE上で動作するサーバーの仮想化向けのソフトウエアである。ヴイエムウェアの「VMware vSphere Hypervisor」を基にした仮想化ソフトが組み込まれており、仮想マシン上でWindowsサーバーを実行できる。

 シスコの担当者は用途について、「データセンターへのサーバー集約を進めている企業でも、本社以外のブランチオフィスに少数のサーバーを残しているケースがある。例えばWAN回線がトラブルに見舞われてもブランチオフィスだけで認証や最低限のデータのやりとりができるように、ディレクトリーサービスやファイルサーバーを残すといった場合だ。こうした『拠点に残したい少数のサーバー』をUCS Express上に統合すれば、管理の手間やサーバー設置スペースの無駄が省ける」としている。

 ゲストOSとしてシスコがサポートするサーバーOSは、Windows Server 2003/同 2008。なお、UCS Expressの価格には仮想化ソフトのライセンス料が含まれるが、Windows OSのライセンス料は別途必要となる。

スイッチやルーター、セキュリティアプライアンスなどの新モデルも

写真4●モジュール型スイッチ「Catalyst 4500E」シリーズ
写真4●モジュール型スイッチ「Catalyst 4500E」シリーズ
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 シスコはスイッチやルーター、セキュリティアプライアンスなどの新モデルも発表した。シャーシ型の筐体にモジュールを挿し込んで使うタイプのスイッチ「Catalyst 4500E」シリーズ(写真4)では、「Catalyst 4507R+E」「同 4510R+E」という2種類のシャーシが新しく登場した。前者はモジュールを収容するスロットが7個、後者は10個のモデルだ。

 また、同シリーズの新しいモジュール「Supervisor Engine 7-E」は、バックプレーンに従来製品の2倍の最大848Gビット/秒ぶんのインタフェースを収容できる。このモジュールはCatalystシリーズの中で初めて、仮想化に対応したソフトウエア「IOS XE」を採用している。従来のIOSに含まれていたトラフィック監視機能「NetFlow」の最新版「Flexible NetFlow」もサポートした。NetFlowではあて先/送信元IPアドレスやポート番号など七つの情報(キー)を元にトラフィックを監視する。Flexible NetFlowでは利用できるキーの数が増え、より細かいトラフィック監視ができるようになった(詳細はシスコのWebサイトを参照)。

 Catalyst 4500Eシリーズではそのほか、12ポートの10Gビットイーサネット対応ラインカード「WS-X4712-SFP+E」と、48ポートのPoEP(Power over Ethernet Plus)対応ラインカード「WS-X4748-RJ45V+E」もそれぞれ発売する。スイッチ製品としてはこのほかに、モジュールを収容できるスロットを13個搭載したシャーシ「Catalyst 6513-E」が新たに登場した。

写真5●セキュリティアプライアンス「ASA 5585-X Adaptive Security Appliance」シリーズ
写真5●セキュリティアプライアンス「ASA 5585-X Adaptive Security Appliance」シリーズ
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 ファイアウォールなどの機能を提供する2Uサイズのセキュリティアプライアンス「ASA 5585-X Adaptive Security Appliance」シリーズ(写真5)では、新たに4製品が登場した。ファイアウオールのスループットやIPSの最大コネクション数が異なる「ASA 5585 SSP-10」「同 SSP-20」「同 SSP-40」「同 SSP-60」である。最上位のSSP-60では、最大コネクション数が従来モデルの2倍に当たる35万、IPSの性能は最大10Gビット/秒、リモートアクセスVPNの同時コネクション数は10万までになった。

 ルーター製品では「Cisco ASR 1000」シリーズに、1Uサイズの「Cisco ASR 1001」が登場した。初期状態で最大スループットが2.5Gビット/秒(ライセンスアップグレードにより5Gビット/秒までサポート可能)と、小型モデルにしては処理能力が高いのが特徴。同シリーズではこのほか、13スロットを備える「Cisco ASR 1013」も紹介された。

 シスコはこのほか、IEEE802.11nに対応した企業向けの無線アクセスポイント「Cisco Aironet 1040」、新たにMacレベルでの暗号化に対応したVPNクライアントソフトの「Cicso AnyConnect VPN Client 3.0」、iPhone対応のVPNクライアントソフト「Cicso AnyConnect VPN Client 2.4 for iPhone」、ネットワークの統合管理・監視ソフトウエアの「CicsoWorks LAN Management Solution 4.0」なども発表した。今回発表した主な製品の価格と発売時期はの通り。

表●今回発表された主な製品の価格、発売時期
表●今回発表された主な製品の価格、発売時期
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