ソフトバンクの孫正義社長は2010年10月25日、「光の道に向けた新提案」と題した説明会を開催し、NTT持ち株会社が9月1日に説明した「光の道のソフトバンクによる試算」に対する反論(関連記事)に再反論した(関連記事)。

 主な質疑応答は次の通り。

 まず、今回の反論で新たに提案した、ソフトバンクによる「アクセス回線会社」への出資について、孫社長は「提示した出資比率は一つの例にすぎない。前回の我々の提案に『アクセス回線会社にソフトバンクはただ乗りしたいだけだ』という批判があったことに対して、応分の負担をするという覚悟を示した」と説明した。

 さらに、続けて「もし共同出資という案に、NTTやKDDIも賛同してくれないのであれば、ソフトバンク一社でもコミットする準備がある。(ソフトバンク試算の)アクセス回線会社の1兆円の負債返済、新たに真水として必要になる5000億円の増資も、やってみせる用意がある」と、意気込みを示した。

 次に、NTT東西のアクセス部門を新会社として切り出す手法については、「企業分割を想定している。分割後は上場しない公益的企業として設立し、5年間をかけて光回線の100%敷設を実現。その後フリーキャッシュフローがプラスになり始めた時点で再上場すればよい」と、展望を述べた。

 加えて、分割により、既存のNTT株を保有している一般投資家は、アクセス回線会社に対する持ち分は無くなることを想定していることを明らかにした。孫社長は、「毎年赤字を出している不採算部門を切り離し、残った上位レイヤーの通信会社は増益になるのだから株主利益には適っている」と説明した。

 孫社長がソフトバンクの事業説明会などで明らかにしている、「2014年度に有利子負債を完済するまでは、大型投資はしない」としている方針との矛盾については、「アクセス回線会社への出資という部分だけは特殊な要因であり、本体の経営指標の外数として見て欲しい」と、方針を翻してでも出資する考えであることを強調した。

 アクセス回線会社の人員コストが計算されているのか、また、2015年までに4300万回線を光化する工事に必要な人員が足りないのではないか、という指摘に対しては、「メタル回線の維持にかかっていた人員は、光回線を新たに作ることで吸収できる。雇用を増やせるのであれば、おおいにけっこうな話だ。『やれるかどうか』であれば、やってみせる」とした。

「DSLユーザーがいる限り、NTT都合のメタル撤廃は無理」

 アクセス回線会社が将来には利益が出るというのであれば、今の株主に「赤字だから手放せ」というのは説得力がないという質問も出た。

 これに対しては、「今の組織体制のまま、NTTが自らメタル回線を撤廃するとは言い出せない。我々やイー・アクセスなどADSLで数百万規模のユーザーを抱えている事業者がいるからだ。アクセス回線会社に各社が出資できる体制にすることで、初めてメタルを撤廃して、今の非効率を取り除くことができる。今のままでは、赤字。将棋の「歩」をひっくり返して『と金』にすれば、黒字になる」とした。

 最後に孫社長は、「これ以上、我々が『できるはずだ』と主張し、NTTが『できません』と反論する堂々巡りの議論をするつもりはない。一緒にやりましょうと、言っている。一緒にやらないのであれば、ソフトバンクが1社でもやる。日本のためにやってみせる。やるべきだ、ということをお伝えしたい」として説明会を締めくくった。