写真1●日経メディカルの二羽はるな記者
写真1●日経メディカルの二羽はるな記者
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写真2●神戸大病院は手術中の情報参照にiPadを利用
写真2●神戸大病院は手術中の情報参照にiPadを利用
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写真3●愛媛大病院はiPadアプリを使った問診票を試験導入
写真3●愛媛大病院はiPadアプリを使った問診票を試験導入
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 「iPadで、これまで難しかった“いつでもどこでも”医療情報を活用することが容易になった」---。東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2010展示会で、日経メディカルの二羽はるな記者(写真1)は、「iPadで変わる医療の現場」と題し、iPadの活用事例を報告した。

 電子カルテやレントゲン、MRI画像のデジタル化、診療ガイドラインのオンライン化など、医療のIT化が急速に進みつつある。しかし「これらのデータが利用できる場所は、医療機関の一部に限られている」(二羽記者)。端末を持ち歩きにくいことなどが理由だ。

 iPadの出現によって状況は大きく変わった。iPadは持ち歩きやすく、画面も大きく、起動時間も短い。そのため、医療現場でのiPad活用が急速に進みつつある。

 iPadの利用方法は大きく3つに分けられる。(1)画像や患者情報の参照と共有、(2)患者への説明や情報収集、(3)パソコン業務の置き換え、である。

 (1)の情報参照と共有の例が、神戸大学医学部附属病院(神戸大病院)だ。神戸大病院は、手術の際にiPad上でCTスキャン画像を参照するなどの形で利用している(写真2)。利用しているのはMac OS向けに開発されたオープンソースソフトウエアのOsiriX(iPhone向けは2300円)である。習志野台整形外科内科、東京慈恵会医科大学附属病院などでもレントゲンやMRI画像の参照と共有にiPadを利用している。

 (2)の患者への説明や情報収集の例としては、東京ヴェインクリニックがある。同院ではiPad上に電子カルテを表示して患者に説明を行っている。パソコンに比べて、患者が自分で操作して閲覧しやすいことから、患者の理解が深まるという。

 愛媛大学医学部 附属病院(愛媛大病院)では、患者に病状を記入してもらう問診表にiPadアプリを試験導入した(写真3、開発はパルソフトウェアサービス)。パソコンに不慣れな患者でも入力しやすく、病院にとっても入力の手間が省ける。

 (3)のパソコン業務の置き換えとして利用しているのが、きむら訪問クリニックである。往診専門である同クリニックには、ファックスによる病状報告が1日20件以上寄せられる。ファックスは自動的にPDF化され、メールとして医師に送信される。これまで医師は移動中にパソコンでこれらのファックスを閲覧、返答していた。起動時間の短いiPadに移行したことで移動中の時間をより効率的に利用できるようになった。また診療の際片手でiPadを操作してカルテなどを参照しながら診察する、といったことも可能になった。

 iPadを医療現場で利用する際に考慮すべき点もある。「医療情報を扱う際のセキュリティは十分に配慮する必要がある。また院内感染の原因にならないようにする対策も欠かせない」(二羽記者)。

 二羽記者は「iPadに続く新しい情報機器がこれからも登場する。これらの機器が、医療現場での情報活用だけでなく、診療自体も変えていくだろう」と講演を結んだ。