写真1●ITpro EXPO 2010の基調講演に登壇した米EvernoteのCEOであるPhil Libin氏
写真1●ITpro EXPO 2010の基調講演に登壇した米EvernoteのCEOであるPhil Libin氏
[画像のクリックで拡大表示]

 「これからの製品は“Love”が重視される」--。2010年10月18~20日に東京ビッグサイトで開催されているITpro EXPO 2010展示会3日目の基調講演に登壇した米EvernoteのCEOであるPhil Libin氏は、クラウド時代を迎え製品に求められる要素が大きく変わりつつあると指摘した(写真1)。

 Phil氏はまずEvernoteについて簡単に説明。「人間の記憶のグローバルプラットフォームになりたい」と語った。そのためにEvernoteは、興味を抱いた内容をコンピュータ/携帯電話/カメラ/スキャナを使って記録すれば、その記録内容をインターネット上に保存して、世界中のどこからでも、どんな端末を使っても簡単に検索・表示できるサービスを提供しているという。

 なかでもイメージ認識の技術を使うことで、手書きの情報も簡単に扱える点がユニークで、「パリで食事をしている際にナプキンに書きとめた情報が、水に濡れてもなくなることはない」と、そのメリットをアピールした。

 こうした特徴を持つEvernoteが、日本で非常によく受け入れられているとする。EvernoteとAPI連携したアプリケーションを全世界で約2500のサードパーティが開発中で、すでに約250製品が発売されているが、その約半数が日本発だという。ユーザー数も、日本が米国に次ぐ第2位である。しかも「日本のユーザー数については以前、3位以下の10カ国を合わせたユーザー数より多いと伝えたが、現在では3位以下の20カ国を合わせた数よりも多い」と、日本での普及に加速がかかっていることを明らかにした。

写真2●現在は“Love Based”時代の初期に当たると説明
写真2●現在は“Love Based”時代の初期に当たると説明
[画像のクリックで拡大表示]

 Evernoteが受け入れられている理由について、Phil氏が挙げたキーワードは「Love(好き)」だ。「経済を動かしているのは“Love”だ」とし、製品開発時の視点としても、「これまでは“Scarcity(希少性)”が重視されてきたが、これからは“Love”が重視される時代に変わる」と予測する(写真2)。

 その背景について、クラウドやAppStoreなどの新しいマーケットプレイスの出現で、「5万ドルくらいの資金で新しいビジネスを始められるようになり、優れたアイディアが手軽に届けられるようになってきている」と説明した。

 Evernoteのユーザーが有料のプレミアムサービスに移行する1番の理由も「Evernoteが好きだから」だとする。一例として、あるときEvernoteのオフィスに熱烈なユーザーから栄養補助食品が大量に入った宅配便が届き、その中に「Evernoteを使っていて非常に便利で大好きだから皆さんで食べてください」というメッセージが入っていたと紹介。「特に要求しないものまで、すすんで提供してくれるようになるのが“Love”だ」とし、この動きは今後ますます加速するだろうと語った。