写真●サイボウズの青野慶久代表取締役社長
写真●サイボウズの青野慶久代表取締役社長
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 「皆さんのコミュニケーションツールは、いまだに電話とメールだけだったりしませんか。本当にメールが便利だと思いますか」。サイボウズの青野慶久代表取締役社長は2010年10月20日、ITpro EXPO 2010の特別講演で、聴衆にこう問いかけた。

 青野社長は、「Eメール時代の終焉 ─ソーシャルワークスタイルの到来─」と題した講演で、「情報共有のツールとして、メールは不便」との持論を展開した。青野社長は、その根拠として、メールの七つの弱点を指摘する。

 まず、メールは一度送信を完了してしまうと取り消せないことだ。「あて先を間違うだけで、個人情報の漏洩につながる」と、そのセキュリティ上のリスクを指摘する。リスク回避のために、「1通送るたびに、あて先や内容を相当慎重に確認しなければならない」。二つめは、1日に多数のメールを受信するため、重要なメールを見落とす恐れがあること。メーリングリスト(ML)を使うと、その量はさらに増えてしまう。

 三つめはメールのやり取りを引き継げない点である。「せっかく良いディスカッションをメールでしていても、それは共有されずに終わってしまう」(青野社長)。四つめはメールでやり取りする内容について、経緯が追いづらくなることだ。

 五つめは受信後に情報の整理がされにくいこと。「書類と違ってメールは各個人で管理するので、一人ひとりが情報を整理しなければならない。これはとても無駄な作業だ」と青野社長は強調する。

 六つめは集計作業がわずらわしい点だ。例えば、複数の関係者の日程を調整する際に、それぞれのメールのやり取りを確認して、表計算ソフトで集計するといった手間がかかる。七つめとして、添付ファイルの容量に制限があることを挙げた。メールサーバーの負荷を軽減するために、添付ファイルの容量に制限を設ける企業も少なくない。

 「メールは効率面でも、セキュリティ面でも弱点が多い。特に組織の中で知恵を生み出すという点で弱い」。青野社長はこう指摘する。

 青野社長は、メールに替わるコミュニケーションツールとして、Webを利用したコラボレーションツールを提案する。具体的には、グループウエアやミニブログサービスなどだ。実際に、サイボウズの社内ではメールの利用を既にやめているという。「サイボウズ社内ではグループウエアで情報をやり取りするようになった結果、社内でメールを使わなくなり、ついにメールは0通になった。これは強制したのではなく、社員がメールの不便さに自ら気付いて自然に使わなくなった結果だ」と青野社長は話す。