写真●富士フイルムコンピュータシステム システム事業部ITインフラ部長の柴田英樹氏
写真●富士フイルムコンピュータシステム システム事業部ITインフラ部長の柴田英樹氏
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 ITpro EXPO 2010の仮想化フェスタフォーラムにおいて2010年10月20日、富士フイルムコンピュータシステムの柴田英樹氏(システム事業部 ITインフラ部長)は富士フイルムにおけるサーバー仮想化の取り組みについて講演した(写真)。富士フイルムは2008年からの3年間でサーバー430台を仮想化環境に統合し、社内クラウドとして利用する計画で、移行は順調に進んでいるという。

 柴田氏は「社内クラウドに移行することで、システム面とビジネス面の両面で効果があった」と説明する。例えばシステム面では、これまで平均20%だったサーバーのCPU利用率が80~85%に上がった。さらに、省電力化、サーバー保守の属人化排除、新サービス立ち上げ期間が1カ月から2日に短縮、ハードウエアやソフトウエアの保守切れに伴うアップグレードの排除といった効果もあった。

 ビジネス面では、サーバーの年間運用費が半減し、約3億円になった。また新規サーバーの構築コストも年間2億円削減できるなどコスト面の効果が大きかった。「ユーザー部門からはサービス立ち上げまでの時間が短くなったと喜んでもらえている」(柴田氏)という。

 移行にあたっては、どのサーバーから着手するかを意識した。具体的には、ハードウエアの保守切れが近いものやリース期間終了が近いもの、サーバーを置いているデータセンターの運用コストが高いもの、といった観点での優先順位付けをした。

 運用体制も移行とともに変更を加えた。一つは仮想サーバー仕様のメニュー化である。仮想サーバーのCPU数やメモリー容量、ディスク容量、OSの種類、バックアップの方法や頻度をパラメーターにして、いくつかのパターンから簡単に選べるようにした。次は自動化で、利用申請をワークフローで管理し、リソースの割り当て作業を自動化することで、仮想サーバーの提供までにかかる時間を短縮した。「ゲストOSとリソースの割り当てまでなら2時間で完了する」(柴田氏)という。

 今後の方向として、「ストレージやネットワークの仮想化」と「社内クラウドと社外クラウドの使い分け」に注力するという。特に社外クラウドについては、SFAやCRM(顧客情報管理)システム、グループウエアを活用できないか検討している。ただし、「認証や通信間の暗号化の方法、データフォーマットの整備などを検討する必要がある」(柴田氏)と解決すべき課題についても指摘した。