写真●ウイルスが増えている理由
写真●ウイルスが増えている理由
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 「ITpro EXPO 2010」展示会最終日に当たる2010年10月20日、日経パソコンの勝村幸博副編集長は「コンピュータウイルスの脅威」と題して講演(写真)。コンピュータウイルスの最新事情を分かりやすく解説した。

 まず勝村副編集長は、コンピュータウイルスの定義を説明。「以前は『マルウエア』や『ワーム』などとウイルスを、用語として区別していたが、最近はパソコンに悪い影響を与えるプログラムすべてをウイルスと呼ぶようになっている」と話した。各種統計を見るとウイルス被害は増える傾向にあり、警戒が必要だとした。

 さらに、ウイルスを感染させる動機が「いたずらから金もうけへと変化している」と指摘。ウイルスが感染した時に画面に派手な表示が出るといった挙動が無くなったため、パソコンの利用者は、感染の事実を知らないまま不正アクセスの“踏み台”にされたり、個人情報を入手されたりしているのが実情だという。

ウイルス作成ソフトのサポート体制が充実

 「ウイルスを作るツール」も出回っていると説明。「最近ではこうしたウイルス作成ツール提供者のサポート体制が手厚くなっており、“試用版”は無料で使える一方で、高度なウイルスを作りたい時には個別相談に応じてくれる」(勝村副編集長)と話した。

 勝村副編集長は2010年時点で特に危険なウイルスを「ウイルス四天王」と呼び、注意を呼び掛けた。ウイルス四天王とは、Webウイルス(関連記事)、USBウイルス(関連記事)、PDFウイルス(関連記事)、Winnyウイルス(関連記事)の4つ。特にPDFウイルスについて、「従来はPDFと言えば安全なファイルの典型だったが、最近はPDF関連ソフトのぜい弱性が狙われることが増えた。不特定多数ではなく(機密情報を保管している)特定の人物のパソコンが狙われる傾向もある。PDF文書として問題なく表示されるので、本人はウイルス感染に気付きにくい」として注意を呼び掛けた。

 最後に対策について説明。日経パソコン編集部が実施した実験では、主要なウイルス対策ソフトのうち100%検出できるウイルス対策ソフトは無かった。「残念だが、現時点では、これ1つやれば完全というウイルス対策は無い。一方で『レピュテーション』など新手法によってウイルスを早期に検出できるようになるといった動きもある。ウイルス対策ソフトの機能強化の動きに期待したい」と締めくくった。