写真1●ルグラン代表取締役 泉浩人氏
写真1●ルグラン代表取締役 泉浩人氏
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 「企業のソーシャルメディア活用には、企業としてのバックアップが必要不可欠。少数の担当者に任せるだけでは悲劇が起きる」──。2010年10月20日、ITpro EXPO 2010展示会の「Sales & Marketing/テクノロジー最前線 シアター」にて、ルグラン泉浩人氏と日経情報ストラテジー井上健太郎副編集長が「まず己を知れば危うからず~ネットマーケティングの落とし穴」と題して講演した。

 Twitterの活用など、ソーシャルメディアを企業からの情報発信に役立てようと考える経営者が増えている。だが、「企業アカウントによるネット上のやりとりが増えてくると、1人ではさばききれない。悲劇が起きる場合も多い」(井上副編集長)。このように、安易なソーシャルメディア活用を警告する。

 続けて、ソーシャルメディアへの具体的な取り組み方について、ルグラン代表取締役の泉浩人氏が国内外の企業事例を引用しつつ説明した。「大きな組織で問題が起きやすい。大きな組織になるほど、ネットマーケティングを一部門に任せてしまいがち。だが、事業部門の協力が得られず失敗するケースが後を絶たない」。
 
 そこで必要となるのは、強力な支援体制である。「全社的なサポートが必要だ。ECサイト構築はむろん、ソーシャルメディアを使ったマーケティングではさらに全社横断的な取り組みが重要となる」(泉氏)。

 情報発信にTwitterを使うという発想には注意したほうがよい、と泉氏は警告する。「米国では、Twitterは情報発信のツールというより、市場の声を聴くツール、顧客サポート用のツールとの見方が定着している」(泉氏)。Twitterによる顧客サポート用のシステムで成長中の米CoTwitterを紹介し「システム的な支援が必要な場合もある」とした。

 米国におけるソーシャルメディア利用事例の一つとして、米国トヨタがソーシャルメディアFacebook上に作った「ファンページ」を紹介した。米国トヨタは、リコール問題で世論の攻撃にさらされる中、Facebookのファンページの利用者数を増やし、ネット上のブランド価値を高めた。「トヨタでは、広報部門、法務部門、製品開発部門、アフターサービス部門も含めた横断的(クロスファンクショナル)チームを作った。さらに、チームが機能するよう、1日の時間の20%をソーシャルメディア対応に割くよう指示した」(泉氏)。このように、部門横断的なチームを単に作るだけでは駄目で、しっかり機能させるための施策が必要であることを指摘した。

 ソーシャルメディアによるマーケティングは、日本だけでなく米国でも「まだ確立したベストプラクティスはない」(泉氏)分野である。この講演は、いわばネットマーケティングの最前線の事例を聴くことができる機会であった。