「ITの世界ではこれまで、メインフレーム、クライアント/サーバー、Webという技術的な地殻変動が3回起こった。今直面している第4の地殻変動は、クラウド。この地殻変動は、これまでとは異なり急速に進行している」。
2010年10月19日、「ITpro EXPO 2010」の特別講演で、米VMwareのアンドリュー ダットン氏(シニアバイスプレジデント ゼネラルマネージャ、アジアパシフィック ジャパン)はこのような見解を示した。
ダットン氏は4度目の地殻変動が進み、企業がクラウドを採用することで、ビジネスの対応力や競争力を高めることができるとみている。「多くの企業では現在、ITのコストはバランスシート上でも大きな負担となっている。クラウドを使ってITをオンデマンドで利用できるようにすることで、この負担は解消できる」(ダットン氏)という。
ダットン氏はこのような見解を示した上で、VCE(Virtual Computing Environment)連合の取り組みを紹介した。VCE連合とは、2009年11月に、シスコシステムズ、EMCとともに立ち上げた企業連合。ネットワーク機器、ストレージ、仮想化ソフトといった、3社それぞれの製品を組み合わせたパッケージ製品「Vblock Infrastructure Package」を共同で開発。VCE連合の立ち上げ発表と同時に販売を開始した。
Vblock Infrastructure Packageは、ユーザー企業がプライベートクラウドを構築する際、動作検証や設定を済ませた状態のインフラとしてすぐに使えることを目指して開発した。「Vblockはいわば組み立て済みのブロック。ユーザー企業がこれを採用することで、すぐにクラウドを実現できる」とダットン氏は語る。
「多くの企業が最初に導入するのは、企業内のプライベートクラウドだ。これまでは、そのプライベートクラウドを構築しようとすると、多くの製品を組み合わせて動作検証をしていく必要があった」とダットン氏は現状を説明する。Vblockはその現状を打開できる製品というわけだ。
ダットン氏は、プライベートクラウドを構築する際、企業は(1)部門のシステムをクラウド化する、(2)基幹業務で利用する企業の主要アプリケーションをクラウドに移行する、(3)それまでプライベートクラウドとして運用していたものを、データセンターに移してサービス化を図る---という三つのステップを踏んでいくとみている。
この三つのステップを経ていくと、ユーザー企業の担当者はさまざまな気付きが得られるという。「部門を対象にしたクラウド化で、コスト削減のメリットが得られる。主要アプリケーションをクラウド移行すると、サービスレベルを高められることが分かってくる。さらにサービス化ができれば、管理しやすく、ビジネスに対して俊敏にITが対応できることを実感できるはずだ」と、ダットン氏は説明する。
VCE連合が開発・販売するVblockも、規模に合わせて三つの製品ラインアップをそろえる。プライベートクラウドをはじめて導入する企業向けのVblock 0、複数のプライベートクラウドを統合するのに向くVblock 1、大規模システムやミッションクリティカルシステムを対象にしたVblock 2の三つだ。
ダットン氏は、すでにVblockを採用してプライベートクラウドを構築した、ある企業の成果も紹介した。その企業では、それまでサーバーを構築するのに45日かかっていたところを、Vblockを採用した後は35分に短縮できた。「仮想サーバーの立ち上げに必要な設定作業を自動化するVblockの機能を利用したことで短縮できた」(ダットン氏)という。この企業では、ハードウエアの利用率が4倍向上し、サーバー関連費用を40%削減するという効果も得られたという。
国内では今年前半にVblockの販売を開始している。ユーザー企業からの問い合わせ窓口を一本化したサポートセンターを設けて、VCE連合の3社が共同で対応できる体制を整えている。「日本でもVblockの導入が始まっている。今後は販売パートナー企業と協力して積極的にVblockを展開していく」と、ダットン氏は語る。