写真●日経コンピュータの吉田洋平記者
写真●日経コンピュータの吉田洋平記者
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 「BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入したものの、うまく活用できていないという事例は大変多い。BI導入に失敗しないためにはどうすればよいのか」---。東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2010展示会で、日経コンピュータの吉田洋平記者が「失敗しないBIツール導入」と題して講演した(写真)。

 BIツールは一般に、データベースやDWH(データウエアハウス)に蓄積されたビジネスデータを抽出・分析し、経営判断の指標として活用するためのシステムのこと。広義には、分析機能だけでなく、DWHのデータを管理する名寄せツールや、部門サーバーなどに散在するデータをDWHに統合するETL(Extract/Transform/Load)ツールなどを含む一連のシステムを指すこともある。

 このBIに対し吉田記者は、「期待は高いが導入は難しいツールだ」と指摘する。日本IBMが78カ国2500人以上のCIO(最高情報責任者)を対象にした調査によると、8割のCIOが「競争力強化のための取り組み検討分野」にBIを挙げている。米調査会社のGartnerが毎年実施している「CIOが優先するテクノロジーランキング」でも、BIが5年連続(2005年~2009年)でトップだった。しかし、吉田記者が実際にBIを導入した企業を取材してみると、「導入したものの、活用がうまくいっていないという声が多く聞かれた」という。

 せっかく導入したBIツールの活用が進まない要因として吉田記者は、大きく3つ挙げた。1つは、BI導入の目的が明確になっていないこと。「とりあえずデータの見える化が必要と考えてBIツールを導入したものの、見えるようにした情報が、実はユーザーが見たい情報ではなかった」(吉田記者)というケースである。

 2番目の要因は、BIツールの機能が豊富すぎたり、操作が難しすぎたりしてユーザーが使いこなせないことだ。「BIを使いこなすには、ユーザーの職域や権限に応じて、機能を絞り込むなどの工夫が必要になる」(吉田記者)。

 最後は、BIツールで見ることのできる情報が正確でないため、その情報を基にした行動がとれないという問題がある。吉田記者は、「データの入力や分析のための環境が十分に整っていないと、BIデータが実データとかい離してしまう」ことを指摘した。

 こういった事態を防ぐには、BIを導入する前に、膨大な要素を部門・業務ごとに吟味しておくなど作業負荷が大きくなる。この点について吉田記者は、BI活用がうまくいっていない、BI導入をためらっている企業に対し、特定の業種、業務に特化したメニューを搭載する「業種・業務別BI」の活用を提案する。

 業種・業務別BIは、「実現したい機能を選択するだけよく、バックエンドのBIソフトやDWHはベンダーが最適なものを組み合わせてくれる。ハードやBIを、アプリケーションを買う感覚で導入できる」(吉田記者)という。

 例えば、日本IBMが2009年9月に発表した業種別BI「BAO(ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼイション)」では、金融機関向けの「マネーロンダリング防止」機能や、製造業向けの「不良品の早期発見」機能といったメニューを選択すれば、それら用途に最適なダッシュボードや分析ツール、DWHなどの仕組みが用意される。

 BI全体のパーツ選定をベンダー任せにしては、投資額が高くなるのではとの懸念がある。こうした点について吉田記者は、「ここにきて、IBMだけでなく、オラクルや日本HP、NTTデータなどが業種・業務別BI製品を投入している。特定の機能について各社から見積もりを取り、価格交渉できるようになってきた」と説明した。