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 2010年10月18日に東京ビッグサイトで開幕した「ITpro EXPO 2010」のキーテーマセッション「クラウド時代の情報活用新機軸~チャンスやリスクの兆しをつかめ!」で、ガートナージャパンリサーチ部門アプリケーションズマネージングの堀内秀明バイスプレジデントが講演した。堀内氏は、「IT部門は、単にITツールに投資するのではなく、情報活用でどんな成果を期待したいのか、その点をもう一度よく考えてほしい」と提言した。

 この提言の背景にはガートナージャパンが日本企業のIT部門を対象に実施した調査の結果がある。堀内氏によれば、多くのIT部門は情報活用で「ペーパーレスの実現」や「業務プロセスの効率化」に最も「期待」し、かつ、これらの領域で「成果」を上げてきた。ところが企業経営者が一番期待するはずの「売り上げの増加」や「新規顧客の獲得」に対して、「IT部門は期待の度合いが小さく、そして実際に成果も得られていない」(堀内氏)と指摘する。

 ここで堀内氏が強調したのは、「IT部門が情報活用において、売り上げの増加や新規顧客の獲得に期待すらしていない」という現状である。これでは成果が上がらないのも当然だろうということだ。堀内氏は、「IT部門が組織として準備や期待ができていないことには、そもそも成果は出にくい」と語る。

情報活用で「これから起こりそうなこと」を知る

 もっとも、情報活用に向けたこれまでの取り組みが、すべてムダというわけではない。これまでの取り組みを前提に、次のステップに進めばよいとアドバイスする。

 これまでの情報活用は、「何が起きたのかをいち早く知りたい」という、情報検知の高速化や効率化がテーマだった。これに対し、2008年秋に起きたリーマンショック以降は「(社内外の多方面から収集した情報を使い)、こんなことが、これから起こりそうだ」と、変化の兆しをキャッチするために、情報を活用したいと考える企業が増えているという。

 SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やTwitterといった新しいメディアの登場で、これまで得られなかった情報まで企業は参照できるようになってきた。この変化を情報活用に生かさない手はない。ガートナーでは、こうした変化をキャッチするための情報活用スタイルを「パターン・ベース・ストラテジー(PBS)」と呼んでいる。

 PBSの実現に向けては、単に情報活用インフラを整備するだけでなく、情報に基づいて自らが行動を起こせるだけの企業文化の醸成や、どんな変化が起こったときに行動するかの判断基準などを現場に周知するための透明性などが重要になると、堀内氏は強調した。

 最後に堀内氏は、「これからのIT部門は、『こんな情報があれば、こんなことができるだろう』といったことを提案できる、情報の“目利き”としての能力が求められる」として、講演を締めくくった。