写真1●2010年10月16日に開催された、「第2回 applim」のフィードバックイベント
写真1●2010年10月16日に開催された、「第2回 applim」のフィードバックイベント
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●参加グループは、それぞれメンターから助言を受ける
写真2●参加グループは、それぞれメンターから助言を受ける
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●基調講演に立った博報堂DYメディアパートナーズの上路健介氏
写真3●基調講演に立った博報堂DYメディアパートナーズの上路健介氏
[画像のクリックで拡大表示]

 2010年10月16日、学生によるマーケティングプランのコンテスト「第2回 applim」のフィードバックイベントが都内で開催された(写真1)。第2回 applimのテーマは、ソーシャルグラフを活用したスマートフォン向けマーケティングアプリの企画。3~6人の参加グループはそれぞれ、商品や企業、ブランド、組織などを選び、販促に有効と思われるアプリを企画・提案する。

 16日のフィードバックイベントは、9月26日に開催されたキックオフイベント(関連記事『550人の学生が「スマートフォン×ソーシャル」のマーケティングプランを競う「第2回 applim」始動』)に続くものになる。博報堂DYメディアパートナーズの上路(じょうじ)健介氏による基調講演の後、応募グループがメンター(チームに専属しアドバイスをする有志の社会人)から、検討中のアプリについてアドバイスを受けた(写真2)。今回参加したのは、全応募132チームのうち、約120チームの約350人だ。

 基調講演に立った上路氏は、岩手放送(IBC)時代に、携帯電話向けニュース放送やポッドキャスト配信をいち早く手掛けたことで知られているメディアプロデューサー。現在は、博報堂DYメディアパートナーズで、郵便事業の「ミクシィ年賀状」のシステム企画開発のほか、マルチ動画変換DBサービス「Rocket Box」、NHKの番組と連動したiPhoneアプリ「ブラタモリ提供ブラアプリ」や「龍馬伝アプリ」などを企画開発している。講演では、その経験を踏まえて、メディア業界から見た消費者トレンドやネットサービスの効果測定の変化、企画立案のヒントを示した(写真3)。

 消費者のトレンドについて上路氏は、過去の定点調査の結果を基に、メディアの利用パターンが多様化し、なおかつメディア接触時間が減っていると指摘した。メディア側の仕掛けとしては、単に既存媒体に呼び込むことよりも、ソーシャルグラフを活用するなどして人の生活に入り込むことを目指すようになっているとする。

 ネットサービスの効果測定について、最近注目を集める位置利用型サービスによって、従来の「アプリのダウンロード」と「視聴」に加えて「到達数」という新しい指標が加わったとする。同氏が手掛けたブラアプリの例では、ダウンロードしたアプリを使って実際に街を散策し、目的地に到達したときに初めて利用できるカメラ機能を用意した。カメラで撮影したこともサービス提供者側で分かるため、ユーザーの行動傾向まで把握できる。

 講演のまとめとして上路氏は、三つのキーワードを挙げた。

 第1のキーワードは、予想外の結果を生む要素を残しておくこと。例えば、ミクシィ年賀状では海外からの予想以上に反響が大きく、167カ国の居住者からの利用があったことを紹介した。

 第2のキーワードは、ロングテールの意味を正しく理解すること。上路氏は、アマゾン・ドットコムがベストセラー品を販売したうえでニッチとされる商品も販売していることを挙げながら、ロングテールの正しい理解は「売れ筋がある中で、死筋と言われる商品からも利益を出すこと」とした。

 最後のキーワードは、シンプルであること。日本と海外のユーザーのサービス利用比較をしたとき、「日本のユーザーは受動的。目的がはっきりしているものを好む」という。日記を売り物にして急成長したmixiを代表例として挙げる。一方、米国のネットユーザーは、一見すると何に使えばいいか分かりにくいプラットフォーム型のサービスを好むという分析だ。

 講演後、学生からの「ランキング上位を維持するための取り組みを教えて欲しい」という問いに対して上路氏は「アプリへの入口をたくさん持つこと」だとし、「グループの議論で出た複数の意見をどうまとめればいいか」との質問については、「ユーザー視点で直感的におもしろいと思うことを選ぶこと」だと回答した。質疑応答後も、上路氏のもとには学生が集まった。メディアを企画する学生にとって、上路氏の経験はいいお手本になったようだ。

 第2回 applimは今後、10月22日に最終書類の提出を締め切り、11月3日には決勝イベントを開催する。