マイクロソフトは2010年10月7日、大規模企業を対象とするエンタープライズビジネスの事業方針説明会を開催。同社 執行役常務 エンタープライズビジネス担当の平野拓也氏(写真)が、今年度(2010年7月~2011年6月)の取り組みについて説明した。
同社のエンタープライズビジネス部門は、日本のトップ300にあたる大規模企業とその子会社を主な顧客とする組織である。エンドユーザー担当、パートナー担当、技術担当の従業員500人が所属する。「これにサポート担当の人数を合わせると、総勢1000人規模の大きな組織になる」と平野氏は説明する。
このエンタープライズビジネス部門で、今年度は大きく3つのことに取り組むという。
1つ目は、「組織改革による体制強化」だ。今年度から、エンタープライズビジネス部門の配下に、パートナー企業の営業および技術をサポートする「エンタープライズパートナー営業統括本部」を設置した。この狙いは、「エンドユーザーと直接やりとりするパートナー企業に対してミッションクリティカルなシステムを扱うためのサポート提供」と、「クラウド分野で新しいビジネスを創出していくためのパートナーとの連携強化」の2つである。
2つ目は、「顧客との長期的リレーションシップ」を築くこと。「デスクトップソフトだけを売っていた時代には、当社のアカウントセールスの相手はIT部門の担当者だけだった。しかし、多様な製品、ソリューションを提供するようになった今では、顧客企業の経営層にアプローチするトップセールス、アプリケーションベンダー専任のセールス、より高度な専門知識を提供する技術営業など、様々な方面で関係作りの強化が必要だ。各方面に、500人のリソースをどう分配するかが今年度の課題になる」(平野氏)。
顧客との関係強化に関する具体的な取り組みとして、平野氏は野村ホールディングスの事例を紹介した。野村ホールディングスは、日本の金融機関として初めて、マイクロソフトと包括的なグローバル契約を締結している。これにより、野村ホールディングスは世界35カ国の全従業員がマイクロソフトの最新技術を利用できることに加えて、24時間365日のグローバルサポートが受けられる。「円高の影響で、日本企業のグローバル化の動きが強まっているが、ここで課題となるのは海外法人のITガバナンスをどうするかだ。顧客のグローバル化をITの側面から支援して長期的な関係を作るためにするために、当社は1月にグローバルアカウントグループを新設した」(平野氏)。
3つ目の取り組みは、「クラウド時代におけるビジネス展開」だ。平野氏によると、企業向けクラウドサービス「BPOS(Business Productivity Online Suite)」の国内ユーザーは25万人を突破。Exchange Serverの浸透率も「エンタープライズ部門が担当する企業においては65%に達した」という。
エンタープライズでのクラウド利用の現状について、平野氏は、「クラウドを試用して利用形態の最適適解を模索している段階」と分析する。「当社はオンプレミスとクラウドの両方に同等の製品ラインナップを持っている。クラウドを試して納得がいかなかったらオンプレミスへ戻ることが可能なので、投資が無駄にならない。今年度はこの利点をアピールしてエンタープライズでの拡販につなげていく」(平野氏)。