写真1●「900MHz帯の割り当てを強く希望する」と主張するイー・モバイル。左から千本倖生・代表取締役会長、エリック・ガン代表取締役社長、阿部基成・取締役副社長
写真1●「900MHz帯の割り当てを強く希望する」と主張するイー・モバイル。左から千本倖生・代表取締役会長、エリック・ガン代表取締役社長、阿部基成・取締役副社長
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 イー・モバイルは2010年10月7日、現在総務省において検討が進んでいる700/900MHz帯の割り当てについて、同社の意見を述べる記者会見を開催した。会見で代表取締役社長のエリック・ガン氏が「1.7GHz帯しかないイー・モバイルにとって900MHz帯の利用はビジネス展開上不可欠であり、割り当てを強く要望する」と述べた。

 900MHz帯の割り当てを希望する理由としては、「エリア充実」と「スマートフォンの導入」を挙げた。エリア充実に900MHz帯を必要とする理由としては、(1)1.7GHz帯よりも一つの基地局で広いエリアをカバーできる、(2)屋内への浸透率が高いという電波の伝播特性により投資効率が上がる---の2点を挙げる。一方、スマートフォンのために900MHz帯が必要と主張するのは、端末を調達しやすいため。「世界的に3G(第3世代移動体通信)での利用が進んでいる900MHz帯は、スマートフォンの端末が調達しやすいし、コストも安い」(ガン氏)。

 ガン氏によると、「1.7GHz帯のスマートフォン端末は、そもそもリソースがないという理由でメーカーに断られる。さらに、世界的に使われていない1.7GHz帯で通信するチップを端末に入れる物理的な場所がないという理由でも断られる。仮に開発してもらえるとしても、大量調達を約束しないといけないため、かなり厳しい」という。

 900MHz帯は、競合のソフトバンクモバイル(SBM)も割り当てを希望している。この点について、代表取締役会長 千本倖生氏は、「NTTドコモやKDDIが持つ700M~900MHz帯のプレミアムバンドを割り当てられていない点ではSBMも同じ。ただし、SBMは2GHz帯という3Gでメインに使われている周波数帯を割り当てられているが、我が社はそれもない。新規参入の通信事業者に公平な競争環境の機会を与えることを総務省に要望する」と、主張した。

 また、総務省が示した900MHz帯割り当て案の一つでは、上り下り各15MHz幅を確保する案が出されている。これを複数事業者で分け合うような形になった場合にどうするかという質問に対しては、「優先順位は我が社にあると思うが、2社で分けることがフェアであることも事実である。スマートフォンに注力する上で、調達コストやエリア展開に900MHz帯は欠かせない。たとえ上り下り各5MHz幅でも価値があるので、割り当てを希望する」(ガン氏)と答えた。

「オークションはプレミアムバンドを持たない事業者だけで」

 割り当てを希望する通信事業者による電波オークションについては、「再編加速のための費用を、周波数を希望する通信事業者が負担することは妥当だが、金額の多寡で決める単純なオークションには賛成できない」(千本氏)とした。

 千本氏は、「タダでプレミアムバンドを割り当てられているNTTドコモやKDDIは多額の利益を上げており、高額なオークション費用を支払って新たに周波数を獲得できてしまう。それでは、新規参入事業者が対抗できない」として、オークションを実施する場合は、プレミアムバンドを持たない事業者だけが入札できるようにするなどの配慮を求めた。