写真●仏マザーでアジア太平洋地域の責任者を務めるジョン・メローズ氏
写真●仏マザーでアジア太平洋地域の責任者を務めるジョン・メローズ氏
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 フランスに本拠地を置く監査法人マザー(MAZARS)は2010年9月末、アジアを中心にコンサルティングサービスを提供するSCS国際会計事務所と、MAZARS&SCS有限責任監査法人を設立し、日本での監査業務に参入すると発表した。仏マザーでアジア太平洋地域の責任者を務めるジョン・メローズ氏は「グローバルに展開する日本企業にとって、我々は四大監査法人に代わる選択肢の一つになる」と強調する(写真)。

 MAZARS&SCS有限責任監査法人は監査業務のほかに、日本企業のIFRS(国際会計基準)への対応や、海外でのIPO(株式公開)の支援、海外企業のM&A(合併・買収)にともなうデューデリジェンス、海外子会社のJ-SOX(日本版SOX)対応支援といった保証業務を手がける。

 メローズ氏は「日本企業の状況を考えると、特にIFRS対応支援の需要が高いのではないか」とみる。日本は、最も早ければ2015年度にIFRSの強制適用(アダプション)が始まる見込みだ。フランスを含む欧州では、2005年にIFRSの強制適用が始まった。

 「欧州企業はIFRSへの対応に5年近くかかった。我々は欧州企業のIFRS対応支援のノウハウがある。これを日本企業にも提供していきたい」とメローズ氏は話す。特に、収益認識や減価償却、子会社の決算期の統一など、「日本企業がどうすべきかと悩んでいるポイントについて、実務的な落としどころを提案できる」と、MAZARS&SCS有限責任監査法人の牧辰人代表社員は話す。

 仏マザーは世界56カ国に拠点を置く監査法人。フランスに本拠地を置くグローバル企業を含め450社以上の上場企業の監査を手がけている。SCS国際会計事務所は、日本人が設立しシンガポールに本社を置く日系企業。アジアを中心に日本企業の海外進出や、外資系企業の日本参入を支援している。

 メローズ氏は「四大監査法人は日本の監査法人をメンバーファームとして組織化している。一方で我々は直接、SCSと共同で日本に監査法人を作る点が大きく違う」と指摘。「顧客から質問を受けた際に、回答の内容を本部に確認するといった手間が要らないため、現場の作業がスムーズに進む」と強調した。

 SCS国際会計事務所の少徳健一代表取締役は、「大手監査法人と同様の給与を得ていたとしても、本部にロイヤルティを支払わないぶん、安くサービスを提供できる」と説明。MAZARS&SCS有限責任監査法人は、グローバルに展開する中堅企業などを主要なターゲットとして、2013年までに100社の獲得を目指す。