日経コンピュータとITproは2010年9月28日、「第1回クラウドランキング」を発表した。クラウドコンピューティング関連の企業イメージとサービス品質を調べ、その結果をまとめたものである。クラウド関連企業としてのイメージに勝る企業11社を「ベストブランド」に、クラウドらしい特徴を備え現行システムからの移行も容易な18社20サービスを「ベストサービス」に選出した。

 クラウドコンピューティング関連で企業イメージやサービス品質を本格的に評価するのは、本邦初の試み。今後のIT利活用の主流とも目されるクラウド分野で、ベンダーやサービス選びの道標となることを目指した。クラウド分野には新興企業から既成の大手IT企業まで参入が相次いでいる半面、どのベンダーが市場をリードするのかや、各社のサービスが本当に「クラウド」に値するモノなのか見極めにくくなっている。

 ベストブランドは、1万2632人が回答したクラウドベンダーとしてのイメージ調査の結果を標準化して算出した総合スコアで75以上の企業11社を選んだ(表1)。グーグル、セールスフォース・ドットコム、アマゾンなどのクラウドコンピューティング分野を開拓してきた新興企業が名を連ねた。日本IBM、マイクロソフト、富士通といった、このところクラウドへの傾斜を強める既成の大手IT企業もベストブランドになった。クラウドコンピューティングを支える仮想化技術の最大手ヴイエムウェアも選出された。

表1●クラウドコンピューティング関連の企業イメージ・ランキング
調査対象は374社。総合スコア75以上の11社を「ベストブランド」に選出した
順位 社名 総合スコア
1 グーグル 104.2
2 セールスフォース・ドットコム 104.0
3 日本IBM 92.7
4 マイクロソフト 91.7
5 富士通 89.8
6 ヴイエムウェア 88.2
7 日立製作所 80.8
8 NEC 80.2
9 アマゾン 79.8
10 NTTコミュニケーションズ 79.0
11 NTTデータ 77.0
12 日本ヒューレット・パッカード 72.7
13 日本オラクル 70.3
14 シスコシステムズ 70.0
15 インターネットイニシアティブ 66.9

 もう一つのベストサービスはクラウドコンピューティング関連のサービスを提供する企業へのアンケート調査で各社のサービスを調べた結果に基づいて選出した。評価結果から算出した総合スコアが65以上のサービスとサービス提供企業を「ベストサービス」とした。

 今回は(1)クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)、(2)汎用業務系SaaS、(3)汎用情報系SaaS、(4)特定業種業務向けSaaS、(5)パブリッククラウド導入支援、(6)プライベートクラウド構築支援、(7)データセンター――の7部門で20サービスを選出した(表2)。各分野の代表的なサービスが順当に選ばれた。

表2●「ベストサービス」に選出された企業とサービスの一覧
企業名(サービス名) 総合スコア
●クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門
CSK-ITマネジメント*(プリセットUSiZE) 72.1
NTTコミュニケーションズ(Bizホスティング エンタープライズ) 69.7
アマゾン・ウェブ・サービシズ(Amazon EC2) 68.1
伊藤忠テクノソリューションズ(TechnoCUVIC Pro) 68.1
日本IBM(IBM Computing on Demand Variable) 65.3
●汎用業務系SaaS部門
日本オラクル(Oracle CRM On Demand) 68.0
NTTコミュニケーションズ(Salesforce over VPN) 67.7
セールスフォース・ドットコム(Salesforce CRM) 65.8
●汎用情報系SaaS部門
ネットラーニング(NetLearning Platform) 76.6
アリエル・ネットワーク(ArielAirOne on Demand) 74.8
グーグル(Google Apps Premier Edition) 72.7
マイクロソフト(Microsoft Online Services) 70.0
フィードパス(サイボウズ デヂエ 8 for SaaS) 66.7
ブイキューブ(V-CUBE) 65.6
●特定業種業務向けSaaS部門
TDCソフトウェアエンジニアリング(HANDy TRUSt) 67.2
ライトナウ・テクノロジーズ(RightNow CX) 65.2
●パブリッククラウド導入支援サービス部門
伊藤忠テクノソリューションズ
(Google Apps Premier Edition導入支援サービス)
72.4
●プライベートクラウド構築支援サービス部門
野村総合研究所(NRIクラウドサービス) 69.0
●データセンター部門
KDDI 68.4
富士通 68.4
* 10月1日付でCSKホールディングスと経営統合し、CSKに社名変更

 ベストブランドを選出する基になったイメージ調査は、2010年7月21日から8月20日にかけて日経BP社のWebサイト会員をはじめとするビジネスパーソンを対象に実施した。クラウドコンピューティング関連の製品/サービスを提供するベンダー374社について、認知度(クラウド関連の製品/サービスを提供していることや、提供する製品/サービスの内容をどの程度知っているか)や、12種類のイメージ項目に当てはまると思うかなどを尋ねた。1万2632人の有効回答から、総合スコアを算出した。有職者からの回答だけを有効回答とした。

 ベストサービスを選出する基になったサービス調査は8月に実施した。クラウドコンピューティング関連のサービスを提供する143社に調査票を送付、サービスの内容や料金体系、仕様、保守・サポート体制など30~45項目を回答してもらった。「クラウドらしさ」と「既存システムからの移行のしやすさ」、「情報公開の程度」などを重視して、調査結果を100点満点で評価した。7つある分野ごとに結果を標準化して総合スコアを算出した。